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話が通じない?

「デイに行く」と言ったのに, 当日になると行かないお客さん
研修で「勉強になりました」と言いながら, 何ひとつ変わらないケアマネさん
「頑張ります!」と言ったのに, まったく学習しない職員
誰もが口では立派なことを言います
けれど, 実際に行動を変える人は驚くほど少ないものです
「めんどくさいだけ」
「根性がないから」
「努力しないから」
多くの人はそう考えがちですが, 実はそこではありません
見えている世界が違う つまり“話が通じていない”のです
今回は, その仕組みと対策についてのお話です
あなたはどっちのタイプ?

人には, 大きく分けて2つの傾向があります
感情で動くタイプ:印象・感想のやり取りが得意 対面での会話を好む
理屈で考えるタイプ:情報処理や文章のやり取りが得意
たとえば理屈タイプが
「『青本』を読んで単位算定の仕組みを理解してね」
と言った時, 感情タイプはこんな反応になりやすいのです
理:「青本を読んで理解してね」
感:「無理です」
理:「どうして?」
感:「嫌だからできません」
理:「??」
感:「昔からこういうのが, どうしてもダメなんです」
理:…
こんなふうに, 理屈の話が“嫌悪感”として受け取られてしまう
そのため, 感情タイプは勉強や文章が苦手になりやすい
ただし, 同じ感情タイプとの信頼関係づくりはとても得意です
一方, 理屈タイプは青本を見た瞬間に頭の中に“構造図”が浮かびます
こうしたイメージを「概念」と言います
感情タイプと理屈タイプは, 本当にまったく違います
どちらが優れているかは状況次第ですが, 少なくとも今の日本社会――
介護も法律も制度設計も, 多くは理屈タイプ前提で作られています
すれ違う理由

対面では普通に会話が成立しているように見えても,
頭の中ではまったく別のことが起きています
感情タイプ
・理屈が理解できないこと自体に気づかない
・相手は「何度同じ話をしているんだろう」と感じる
・「分かった?」と聞かれると, とりあえず「分かりました」と言う
・返事だけ妙に良い人ほど, 実は理解していない可能性が高い
理屈タイプ
・相手が理解できていないことに気づかない
・相手は「結局何が言いたいの?」と思っている
・分からないことは素直に「分からない」と言う
・ただし, 相手が求めている“共感”を見落としがち
こんなふうに, お互いがズレているのに, そのズレに気づかないのです
要は, ”犬がワンワン吠えているのと同じ” お互いに相手のことを分かった気になっているだけ
だから, 事件が起こった後に
「何回言っても伝わらない」
「同じ説明を何度しても通じない」
と思ってしまう そんな経験, 仕事でありませんか?
でも, 原因が分かれば, 対策も見えてきます
対策編:「通じる話し方」

話が通じないのは, あなたが悪いのでも, お客様が悪いのでもありません
ただ「世界の見え方」が違うだけです
その違いを前提にすれば, 感情タイプでも無理なく“理屈”を扱えるようになります
ここでは, だれでもすぐ使える方法だけに絞りました
1)まず“気持ちのドア”を開ける
感情タイプは, 気持ちが閉じていると何を言っても入りません
最初の一手はとてもシンプルです
「安心して 私はあなたの味方です」
これを態度で示します
100の言葉より 1回のアイコンタクト
相手の正面を見て 敬意をもって頷く
これだけで相手の“聞くスイッチ”が入ります
2)伝える言葉は「一つ」「単語」「結論を先に」
感情タイプは同時に複数の情報を処理できません
高齢のお客様ならなおさらです
だから, 大事な単語を一つだけ, 結論だけ伝えます
「運動になって仲間にも会えるし, 生活リズムも整うし……」
「今日は, デイに行ってね」
たったこれだけで十分です
細かな理由は, あなたの表情・態度から読み取ってくれます
3)選択肢は2つだけ
選択肢が多いと, “めんどくさい”が勝って全部イヤになります
「今日はAとB, どっちにしますか?」
・“する/しない”で選ばせない
・“どっちならできるか”で選ばせる
これが感情タイプにとっての理屈の入口です
4)“理由”ではなく“感情”を伝える
理屈タイプは「理由」がほしい
感情タイプは「感情」がほしい
「デイサービスはADLの維持に必要です」(理由)
「私はあなたにデイに行ってほしいんです」(感情)
この“感情”が伝わると, 行動が変わりやすくなります
5)ハードルは“とても小さく”
いきなり青本は無理でも, 「この1行だけ」はできます
お客様も同じです
・玄関に立てたら100点
・靴が履けたら合格
・車に乗れたら大成功
理解にも行動にも, まずは“自信”が必要です
6)最後は「相手に選択させて」締める
押しつけると心のシャッターが閉じます
だから, 最後の選択だけは相手にゆだねます
「今日は行きますか?」
こう言われると, 感情タイプは“自分で決めた”と感じられます
理屈を通すには, まず“気持ち”を整える

感情タイプと理屈タイプでは, 見えている世界が全く異なります 話が通じないのは, 能力ではなく「仕組み」の問題です
感情タイプの世界では
・安心が何より大事
・情報が多いと混乱する
・感情が動かないと行動できない
・小さな成功でやる気が出る
これを知っているだけで,
“話が通じないお客様”への対応は驚くほど変わります
先に“気持ちの道”をつくり, その上に理屈をそっと置く
これが, 感情タイプを“動ける人”に変えるコツです
お客さまだけではありません 職員とのコミュニケーション・家族・ケアマネにも, そのまま応用できます
さらに, 自分のモチベーションアップにもつながるんです!
・失敗していい環境で(安心感)
・勉強をルーチン化して(情報を減らす)
・興味がある箇所から勉強をはじめ(感情)
・ゴールを区切る(小さな成功)
あとは, 淡々とこなすだけ これを続ければ, 成果は思った以上に早く訪れます 他人も自分もメンタルを整えて, 一緒に楽しくお仕事しましょうね!