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ケアマネの「御用聞き」は, いらない

加算は数が多く, 要件も細かく決められています そのため, 現場での一つひとつの判断が, そのまま算定の可否に直結します もちろんケアマネージャーも加算を理解している建前ではありますが, 実際には通所・福祉用具・短期入所など多くのサービスを横断的に把握しなければならず, 訪問介護の加算に精通している方は多くありません 言い方は厳しいですが「ケアマネの言いなり」になってしまうと, 本来算定できる介護報酬を逃してしまうことがあります

だからこそ, 訪問介護については, サ責が誰よりも詳しくあるべきです
ヘルパーの動き, お客さまの状態, 記録, 本当にお客さまのためになる計画書への落とし込み──これらはサ責にしかできない役割です

サ責が制度の意図と実務の両方を理解し, ケアマネに対して
「このケースではこの加算が妥当です」
「今回は加算の要件に該当しません」
と助言できるようになった時, 単なる“御用聞き”ではなく, 専門職として信頼される存在になります

今回の内容は, 加算の構造をただ覚えるためのものではありません
サ責として現場判断の精度を高め, ケアマネに適切な助言ができる“専門家の視点”を身につけるためのものです

理解できるまで、何度も読み返して身につけてください そして, 早く次のステップに進み, 一緒に「稼げるサ責」になりましょう!

※よく使う加算のみを厳選して解説しています
※「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(厚生労働省)」および通称「青本」を参考にしています
※要件の後ろの記号や数字は法令根拠です 何も記載がない場合は, 法令または青本の一般的な解説部分に該当します

代表的な加算の確認

まずは次の代表的な加算を確認しておきましょう 知らない人は ひとつ前の内容を理解してからご覧ください 

「かけ合わせタイプA」

算定単位に対して直接割増をかけるタイプ

・特定事業所加算
・2人介助加算
・夜朝加算
・深夜加算 

特徴:サービスの「種類」や「提供時間」にかかわらず, 該当条件に当てはまれば基本単位に率をかける 

「足し合わせタイプ」

定額を後から加えるタイプ

・初回加算
・緊急時訪問介護加算

特徴:割増ではなく, 一定の単位数を“上乗せ”する方式 

「かけ合わせタイプB」

最終的に全体へかけるタイプ

処遇改善加算 

特徴:最終段階で全体にかけるため, 「A」タイプの加算や足し算加算の影響も含めたうえで増える 


このあと, 具体的な加算の中身を
Aタイプ → 足し算タイプ → Bタイプ
の順に解説します 先に目的の内容を知りたい方は, 目次から飛んでください 説明の順番は理解しやすくするため一部まとめています

2人介助加算

2人介助の場合は100%割増(=倍額)

※サービスの「種類」や「提供時間」にかかわらず, 該当条件に当てはまれば基本単位に率をかける 

2人介助の要件

  1. 身体的理由でヘルパー1人では困難
  2. 暴力行為, 著しい迷惑行為, 器物破損行為等が認められる
  3. その他, 状況等から判断して, 上記に準ずると認められる

※例えばこんな時

  • 体重が重い人の入浴介助
  • エレベーターの無い建物の2F以上からの外出介助

こんな時は?

  1. 通院等乗降介助に2人介助の算定はダメ
    ただし身体介護で算定することは想定できる【No17】H15.5.30
  2. 2人介助の後, 1人のみが残って引き続き介助を行う場合, 該当するサービスコードが無いため, 便宜上別々に算定する【No17】H15.5.30

夜朝加算・深夜加算

夜朝は25% 深夜は50%割増

※サービスの「種類」や「提供時間」にかかわらず, 該当条件に当てはまれば基本単位に率をかける 

夜朝・深夜の要件

  1. 18時〜22時/6時〜8時 → 夜朝加算
  2. 22時〜6時 → 深夜加算

時間をまたぐ場合は?

  • わずかな時間帯だけなら算定できないことがある(個別にケアマネが判断)

訪問介護 特定事業所加算

事業所ごとに設定された割合で割増され, すべての利用者に適用される

  • (Ⅰ)20%
  • (Ⅱ)(Ⅲ)10%
  • (Ⅳ)(Ⅴ)3%

※サービスの「種類」や「提供時間」にかかわらず, 該当条件に当てはまれば基本単位に率をかける 

特定事業所加算の要件

詳細要件(1)〜(7)の組み合わせで判定

  • Ⅰ:すべての要件を満たす
  • Ⅱ:(1)〜(4) と、(5)または(6)のどちらか

(Ⅲ)〜(Ⅴ)は下図のとおり

算定要件(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)(Ⅳ)(Ⅴ)
(1)研修
(2)会議と報告
(3)定期健診
(4)緊急対応
(5)ヘルパー要件
(6)サ責要件
(7)顧客要件
サ責配置
ヘルパー勤続年数
中山間地提供
サ責の多職種連携

詳細要件

(1)研修:すべてのサ責・ヘルパーが個別の研修計画を立て, 研修を行う
(2)会議と報告(どちらも必須)
 (一)会議:お客さま情報の共有, スキルアップを目的とした会議を定期的に開催する
 (二)報告:サ責の指示とヘルパーの報告を適宜行う
(3)定期健診:年1回以上の健康診断を実施する
(4)緊急対応の明示:緊急時の対応方法を明示する
(5)ヘルパー要件:介護福祉士が3割, または一定資格保持者が5割以上(介福・実務者・基礎研修・一級)
(6)サ責要件:すべてのサ責が一定資格を保有している(介福・実務者・基礎研修・一級)
(7)顧客要件(一・二のいづれかでOK)
 (一)重度要件:要介護4・5, 日常生活自立度(Ⅲ・Ⅳ・M), たんの吸引等を必要とする者の占める割合が20%以上
 (二)看取り要件
 a.病院・診療所・訪問看護ステーションと連携し, 24時間体制
 b.看取り期の対応方針を決めている
 c.Dr・Ns・CM等多職種連携して看取り方針の見直しを適宜行う
 d.看取りの研修を行う
 e.三ヵ月以内に次に該当する者が1人以上
  ⅰ.Drが回復の見込みがないと診断
  ⅱ.看取り期の介護を提供

〇サ責配置:基準を上回る数の常勤のサービス提供責任者を1人以上配置
〇ヘルパー勤続年数:勤続年数7年以上が30%以上
〇中山間地提供:中山間地域等に継続的にサービス提供
〇サ責の多職種連携:サ責等が起点となり随時CMや医療従事者等と共同し, 訪問介護計画の見直しを行う

※特定事業所加算(Ⅴ)と, 「特地加算」「中山間地小規模加算」「中山間地サービス提供加算」は併用不可

初回加算

初回加算:利用開始月に 200単位 を加算

※割増ではなく, 一定の単位数を“上乗せ” 

要件

  1. 新規に訪問介護計画を作成
  2. サ責が初月訪問介護を提供
    または
    初月にヘルパーが訪問介護を提供した時にサ責が同行

こんな時は?

  1. 「初月」とは初回訪問の属する月(30日間ではない)
    月内に1回のみ訪問なら, 加算のチャンスは1回だけ
  2. サ責同行は途中で帰ってもOK(老企36 第2の2(21)H12.3.1)
  3. 2月以上空いたらリセット((例:4/15実施なら最終訪問が2/1以前)【55】H21.3.23
    ※ただし担当者会議→訪問介護計画の必要あり
  4. 要支援(総合事業)→要介護移行でもリセットされ算定OK【55】H21.3.23
  5. 複数の訪問介護事業所を利用していても、それぞれ算定OK【55】H21.3.23

緊急時訪問介護加算

緊急対応1回につき 100単位 を加算

※割増ではなく, 一定の単位数を“上乗せ”

緊急時加算の要件

  1. 本人や家族からの要請
  2. 要請から24時間以内
  3. ケアプランに定められていない
  4. ケアマネが必要と認める
  5. 身体介護のみ(安否確認や健康チェックではダメ)
  6. 記録(要請のあった日時, 内容, 理由)が必要
  7. そもそも体制の届出が必要

こんな時は?

  1. ケアマネと連絡が取れない場合は事後承諾でもOK
  2. 通常訪問中の急変対応は対象外【55】H21.3.23
  3. 救急搬送など医療保険などとの二重利用となる場合は不可
  4. 2時間以内の場合でも 合算しない(2時間ルール対象外)【64】H24.3.16
  5. 回数制限はないが…(何度もあることは想定していない 「計画変更しなさい」が建前)

訪問介護 介護職員処遇改善加算

事業所ごとに定められた割合で, すべての加算・減算を反映したあとに 最後に掛け合わせる 

 Ⅰ:24.5% Ⅱ:22.4% Ⅲ:18.2% Ⅳ:14.5%

※最終段階で全体にかけるため, 「A」タイプの加算や足し算加算の影響も含めたうえで増える

処遇改善加算の要件

  • すべてを職員の賃金改善に充てる
  • スキルに応じた職位・職責・職務内容を設定し, 周知する
  • 研修や資格取得の補助を行う
  • 経験・年数・資格に応じた昇給と人事評価を行う
  • 年収440万円になる職員がいること(緩和要件あり)
  • 特定事業所加算ⅠまたはⅡを取得
  • 職場環境改善の取り組みを行う

詳細な要件はコロコロ変更されるため省略 しかし, 大筋はさほど変わりませんので, 概念を頭に入れておきましょう

加算なんて早く片づけて, 稼ぎ切れ!

加算の理解は, あなたの成長において“通過点”にすぎません
確かに要件は複雑だし, 法改正で変わることもあるので, 最初は大変に感じるでしょう しかし, 仕組みさえ腹落ちしてしまえば, 法改正は怖くありません 加算は単なる知識ではなく「未来の動向予測」「会社からの信頼」「ケアマネからの信頼」──つまり, あなたの知的労働を成長させるための“練習”にすぎないのです

本当に重要なのは暗記ではなく
「自分の判断で、根拠を持って他人に助言できる人物になること」
そこに到達した瞬間, あなたはもう“御用聞き”ではなく, 自分で稼げるビジネスパーソンです

介護の未来は明るい けれど, その途中は少ししんどいかもね
以前, 私はこうお伝えしました

「みなさん, 稼ぎたいですよね? 田舎のサ責で終わるつもりはありませんよね?」

だったら, この程度の理解で立ち止まる必要はありません
これは, あくまでスタートラインです

さっさと覚えて, 早く“片手間でサ責できる”レベルになりましょう
その先には, 他人からの信頼だけでなく, あなた自身を確実に成長させる未来が待っています