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あなたが本を読めない理由

難しい本が読めないのは、頭が悪いからではありません
実は「言葉の意味」を曖昧に使っているだけです

私たちは読み書きはできますが, 「概念」「因果」「抽象」などの重要語を, なんとなく使っていることが多いのです
この状態では, 難しい本は理解できません

逆に言えば, 基本的な言葉の意味を理解するだけで, 本の理解は一気に楽になります

この内容では, 人が考えるときの言葉を
「気づき」「判断」「説明」「言語」という4つの思考ステップに分けて説明します。

このシリーズを見ると
本を読む力だけでなく, 考える力そのものが整理されます

それではさっそく始めましょう

目次

① 気づき系(11語)

世界を直感的・瞬間的に把握する段階です まず, 人は世界の出来事に気づくところから思考が始まります

現象(げんしょう)

人が見たり, 聞いたり, 感じたりして分かる出来事のことです

現象がなければ, 人はそもそも出来事に気づきません

認知・認識(にんち・にんしき)

どちらも「気づいて理解すること」です

認知
脳が情報を処理すること
例文「年齢によって認知の仕方は変わる」

認識
理解した結果
例文「矢野君は漫画を読んで, 自分の感情が『恋』だと認識した」

観測(かんそく)

注意して見たり測ったりして, 何が起きているか確かめること

ぼんやり空を見て雲に気づくのは「見る」
雲の量や動きを毎日記録するのが「観測」です

意識(いしき)

自分が気づいている状態
例文「恋に気づいた矢野君は, 吉田さんのことを意識するようになった」

無意識(むいしき)

自分では気づいていないが, 心や体が働いている状態

人の判断には, 意識だけでなく無意識も大きく影響しています

感性(かんせい)

感覚や直感で世界を感じ取る力

理性と悟性(りせいとごせい)

悟性
物事の意味を理解する力

理性
その理由や原理を考える力

例えば

リンゴが落ちるという現象があります

「リンゴが落ちた」と理解するのが悟性
「なぜ落ちたのか」を考えるのが理性
そして「重力で落ちる」と理解するのが認識です

主観(しゅかん)

個人的な感じ方や判断

例文「その料理がおいしいかどうかは, 人によって違う これは主観です」

客観(きゃっかん)

個人の感情ではなく, 誰が見ても同じ事実やデータに基づく見方

例えば

介護記録で「落ち着いていた」は主観
客観的に書くなら「会話は穏やかで声の大きさは通常だった」と書きます

差異(さい)

違いのことですが, より学問的な言い方です

例えば

日常会話「男女の違い」
学問的「男女の差異

解釈(かいしゃく)

同じ出来事を, どのように理解するかという視点です

例文「同じ調理支援でも解釈によって『身体介護』『生活援助』に分かれることがあります

コラム-実は高度な思考職

実は介護という仕事は

  1. 医学
  2. 心理学
  3. 社会学
  4. 哲学

が交わる職業です 特に

現象 → 解釈 → 判断

という思考は

  1. 医師の診断
  2. 科学研究
  3. 哲学

と同じ構造です つまり介護職は, 実はかなり高度な思考職なのです

練習してみよう

次の文章が理解できれば, この章は合格です!

人はまず世界の出来事を現象として感じ取ります
それを感性によって受け取り, 意識の中で気づきます

そして現象を見たり測ったりする観測を通じて、人はそれを認識します

しかし最初の理解は, 人それぞれの経験による主観の影響を受けやすく, 必ずしも客観的とは限りません
また, 人の判断には無意識の働きも関わっています

そこで人は, 感性で捉えた現象を悟性で理解し, さらに理性で理由や原理を考えます

こうして多くの現象観測し, 主観に偏らず客観的に考えることで, 人間の認識は深まり, 世界の理解へと発展していきます

② 判断系(7語)

世界を意識したら, 次は「どう考えるか」を決める段階です

事実(じじつ)

本当に起きた出来事や、確認できること

類義語:現実・実情・真実
対義語:解釈・意見・虚偽

例えば

介護記録で「お客さまは怒っていた」は解釈
客観的に書くなら
「大きな声で『帰れ』と3回発言した」が事実です

相関(そうかん)

二つの出来事に関連があるように見えること

ただし, 原因とは限りません

例えば

「高齢になると認知症が増える」は相関関係ですが
年齢そのものが原因とは限りません

因果(いんが)

原因と結果の関係

相関よりも, はるかに強い関係です

例文「血管障害が原因で起こる認知症は, 因果関係がはっきりしています」

整合(せいごう)

つじつまが合っていること

ただし, つじつまが合っているだけでは正しいとは限りません

対義語:矛盾

例文「実地指導で, ヘルパーの訪問記録と介護報酬の請求額が整合していない場合, 監査になることがあります」

妥当(だとう)

理由があり, 適切だと考えられること

類義語:適切・合理的
対義語:不当

例えば

徘徊や転倒リスクがある方の見守りは妥当です
しかし訪問介護で「見守りだけ」を行うことが, 必ずしも正当とは限りません

誤謬(ごびゅう)

一見正しそうに見えるが, 考え方が間違っていること

単なるミスではなく, 思考の間違いです

例えば

「高齢者は転びやすい だからこの人も必ず転倒する」
これは誤謬です

評価(ひょうか)

結果をもとに、良し悪しや価値を判断すること。

例文「歩行距離が5mから10mに伸びた そのためケアプランは妥当だったと評価できる」

コラム-本を読むコツは, 文章ではなく“重要語”を追うこと

本には必ず「重要語」が使われます
著者はその言葉を, 説明するのに最も適した言葉だから使っています

つまり, その本で繰り返し出てくる「重要語」の文脈が分かれば
本全体の言いたいことはだいたい理解できます

ですから, 時間がない人は重要語の周囲だけを重点的に読みましょう

受験勉強の場合は, 重要語にアンダーラインを引いてください
そこが, そのままテストの解答になっていることが多いからです

本を読むコツは, 文章ではなく“重要語”を追うことなのです!

練習してみよう

意味が理解できれば, この章は合格です

介護ではまず、起きている事実を正確に把握することが大切です
例えば「利用者が食事を半分残した」「歩行が不安定だった」など、観察できる内容が事実です

複数の事実を比べると、一定の相関関係が見えることがあります
しかし相関があっても、必ずしも原因とは限りません
原因と結果がはっきりしている場合を因果関係といいます。

また、記録と実際の状況が整合しているかも重要です
それが適切な支援につながるからです

主観的な判断は, 誤謬につながることがあります

計画期間の終了時には, 結果を振り返り, そのケアが適切だったかを評価することが大切です

③ 説明系(7語)

人は, 判断した内容について「なぜそうなのか」を理由づけします

推論

わかっている手がかりをもとにして, 筋道を立てて答えを考えること

※推測は「はっきりしないことを、おそらくこうだろうと考えること」

類義語:推理・論理的思考
対義語:直感・感覚的判断

例文「介護職は, 表情や動作から利用者の不調を推論することがあります これは単なる推測とは異なります」

演繹

一般的なルールから結論を導く推論

対義語:帰納

例文「定理に間違いがなければ, 演繹によって導かれる結論は正しいといえます」

帰納

多くの事例から共通する法則や傾向を見つける推論

相関は「データの関係」を示すもの
帰納は, そこからルールを見つける推論です

対義語:演繹

例文「医学研究では, 多くの患者データを集めて病気の傾向を帰納します」

一般化

多くの事例から得られたルールを, 広く当てはまるものとしてまとめること

近い言葉:普遍化(すべてに当てはまると考えること)

例文「その結論を一般化するには, まだデータが不足しています」

不確実性

完全に分からないわけではないが, 一定の範囲ではっきりしない状態

例文「医療判断には常にある程度の不確実性があります」

論理

理由や根拠をもとに, 筋道を立てて考えること

例えば

歩行能力が低下している
 → 転倒リスクが高い
  → リハビリを検討する

このような考え方を論理的といいます

合理的

理由に合っていて, 無駄のない考え方や行動

用例:
経済合理性:利益に合っている
合理化:無駄を減らす
合理的理由:理屈に合い, 納得できる理由

コラム-最初は意味が分からなくてOK

私たちは, 多くの重要な言葉をあいまいなまま使っています
しかし, その意味を理解するだけで, 本の理解は一気に楽になります

ですから本来は, 重要語をしっかり理解してほしいところです
ただ, それが難しければ丸暗記でもひとまずOKです

言葉は, 実際に使わなければ本当の意味は理解できません
ですから, この動画を何度も聞き流して, まずは
「聞いたことがある言葉」にしてください

今回は, 重要でよく使われる36の単語を本気で厳選しました しかも, かなり知的な内容です

これらを理解すれば, あなたの教養は確実に上がり
世の中の見え方が少しずつ変わり始めるはずです

練習してみよう

意味が分かれば合格です

人は, 観察した事実をもとに推論を行い, 物事の原因や結果を理解しようとします
推論にはいくつかの方法があります

一般的なルールから具体的な結論を導く方法を演繹といいます
一方, 多くの事例から共通する傾向を見つけてルールを導く方法を帰納といいます

帰納によって得られた結論は, 多くの場合に当てはまると考えて一般化されますが, 必ずしも例外がないとは限りません

そのため, 現実の判断には常に不確実性が伴います

私たちは, 事実やデータをもとに論理的に考え, その中で最も筋道が通った説明を選ぼうとします
このように, 理由や根拠に基づいて無理なく判断することを合理的な思考といいます

説明とは, 「なぜそうなるのか」を筋道立てて示すことです

④言語系(11語)

いよいよ最後 考えを言葉にして, 他人と理解を共有する段階です

人は、考えた内容を言葉にしなければ他人と共有できません
ここでは, そのために使われる重要な言葉を説明します

具体

実際に見たり, 想像できるもの

用例:具体化 / 具体例 / 具体案 / 具体策
対義語:抽象

抽象

多くの例に共通する特徴をまとめること

その結果, 概念が生まれる

用例:抽象化 / 抽象概念 / 抽象画
対義語:具体

概念

共通する意味を整理した考え方

近い言葉
理念:社会や人が目指す理想
観念:頭の中に浮かぶイメージ

観念と概念との違い:
観念は単なるイメージ
概念は整理された意味

例文「介護では『自立支援』という概念が重要である

普遍

多くのものに共通すること

類義語:共通 / 一般
対義語:特殊

例文「愛や友情は多くの文化に見られる普遍的な感情である」

特殊

限られたものにだけ当てはまること

類義語:特別 / 個別 / 特定
対義語:普遍

例文「高齢者でも生活状況は一人ひとり異なるため, 介護には特殊な事情がある」

二項対立

二つの反対の概念で物事を説明する考え方

例えば

善と悪
成功と失敗

対義語:多元的理解 / 連続体

例文「社会を善と悪の単純な二項対立で考えるのは危険である」

二律背反

どちらも正しそうだが, 同時には成立しない矛盾

例えば

自由とルール

類義語:矛盾 / パラドックス
対義語:整合 / 一貫

例文「『自由』と『ルール』社会にはどちらも必要だがこの二つの価値には二律背反が生じることがある

階層

上下の段になった構造

類義語:レイヤー / 段階 / レベル

例文「会社経営には
理念

戦略

具体策
という階層がある 階層が違うと, 議論がかみ合わないことがある

次元

物事を見る軸

類義語:観点 / 側面

例文「良い介護を考えるとき『安全』と『本人の自由』は, 異なる次元の価値である

絶対

何にも左右されないもの

対義語:相対

例文「法律であっても解釈の違いが生じるため, 絶対的とは言えないことがある」

相対

他のものとの関係によって決まること

類義語:比較 / 関係 / 文脈
対義語:絶対

例文「絶対的に正しい介護は存在しない 介護の良し悪しは状況によって相対的に変わる」

コラム-どんどん”パクっ”て, 賢くなろう!

今回紹介した言葉や説明は、すべて私が整理して作ったものです
言葉の選び方から説明, 例文まで何度も見直し, ファクトチェックも行いました

でも, ここで一つ大事なことがあります

いい言葉は, どんどん使ってください

実は, 知識は「借りて使う」ことで身につきます
難しい言葉も, 最初は意味を完全に理解していなくても大丈夫です

まずはそのまま使ってみる
そして, 使ううちに意味が少しずつ分かってきます

言葉は, 使わなければ身につきません

ですから, この動画で紹介した言葉を, 安心してどんどん使ってみてください

それだけで, あなたの思考と言葉のレベルは, 確実に一段上がります

練習してみよう

意味が分かれば合格です

介護は現場の具体から出発し
そこから介護とは何かという抽象的な概念を考える営みである

尊厳や生活の維持といった普遍的価値がある一方
利用者ごとの特殊な事情もある

また、介護では
「安全」と「自由」のような二項対立
二律背反に直面することも多い

さらに、理念から支援方法までの階層
身体・心理・社会という次元を考える必要がある

そのため、介護に絶対の正解はなく
状況によって最善を考える相対的な判断が求められる

人間の思考 4つのステップ

これまでこのシリーズでは, たくさんの言葉を紹介してきました

「現象」「認識」「因果」「次元」「抽象」「階層」などです

見たことがあるし, 何となく知っている気になっている言葉ですが, 実はとても大切な言葉です

では, なぜこんな言葉を学ぶ必要があるのでしょうか?

それは, 人間の思考にはある共通した流れがあるからです

昔の科学や哲学では, 人は言葉を使って考え, 判断していると考えられてきました きっと皆さんも, そう思っているかも知れませんね

しかし, どうやら人の思考はそれだけではないことが分かってきました 人は世界を理解するとき, 次のような段階を通ることがあります

直感 → 判断 → 説明 → 言語

言葉が最後なの?  少し意外ですよね?

このシリーズでは, この「思考の4ステップ」に合わせて内容を説明してきました

まず最初にあるのは, 世界

当たり前ですが, 人の外には世界があります
出来事があり, 物があり, 人がいます

そして人は, その世界の出来事を直感で受け取ります

これが第一段階, 直感です

直感というと, 特別な能力のように聞こえるかもしれませんが, そうではありません

たとえば

「あの人, 今日は元気がないな」
「なんだか空気が重いな」
「この説明はおかしい気がする」

こうした最初の気づきは, ほとんどが直感です

この段階では, まだ理由は分かっていません
ただ「何かに気づく」それだけです

このシリーズの第一章「気づき系」で扱ったのが, この段階でした

人はまず

現象を見て
感性で感じ
意識で気づき
認識していく

ここが思考の入り口です

第二段階「判断」

直感で気づいたあと, 人は次のように考えます

「これはどういうことだろう?」
「何が起きているんだろう?」

そして

事実なのか
ただの思い込みなのか
原因は何なのか

などを考えながら, どの考えを採用するか決めます

これが判断です

ここでは

事実 相関 因果 整合 妥当 誤謬 評価

といった言葉を学びました

つまり判断とは

何を正しいと考えるかを決める作業

なのです

しかし, 人間は判断しただけでは終わりません 次に必ず行うことがあります

第三段階「説明」

人は判断した内容について「なぜそう言えるのか?」を説明しようとします

このとき使われるのが

推論 演繹 帰納 一般化 論理 合理性

といった考え方です

つまり説明とは

理由を示すこと

です

科学も, 医学も, 法律も, 哲学も, 基本的には同じ構造を持っています

事実を観察し
推論し
結論を説明する

これが説明の段階です

第四段階「言語」

人は考えた内容を, 言葉にしなければ他人と共有することができません そこで登場するのが

具体 抽象 概念 普遍 特殊 階層 次元 相対

といった概念です これらは, 考えを整理して伝えるための道具です

つまり言語とは

思考を他人と共有するための道具

なのです

ここまでをまとめると, 人間の思考は次のように進みます

まず世界がある
そこで何かに気づく
次に, それをどう考えるか判断する。
そのあと, 「なぜそう言えるのか」を説明する
そして最後に, その考えを言葉にして共有する

つまり

世界 → 直感 → 判断 → 説明 → 言語

これが, 人間の思考の基本的な流れです

そして, このシリーズで紹介してきた概念は, 実はすべてこの流れの順番なのです

  1. 気づきの概念
  2. 判断の概念
  3. 説明の概念
  4. 言語の概念

つまり, 私たちはこれまで

人間の思考の道具

を学んできたのです

難しい本が読めない理由は, 頭が悪いからではありません ただ, この思考の道具の名前を知らないだけなのです

言葉を知ると, 思考は整理されます 思考が整理されると, 本が読みやすくなります

そして本が読めるようになると, 世界の見え方が変わります

教養が身につく瞬間

最後に一つだけ覚えておいてください

人間は, 言葉の範囲でしか考えることができません

だからこそ, 言葉を学ぶことは, 思考を広げることなのです

今回紹介した言葉を, ぜひ実際に使ってみてください

最初はうまく使えなくても大丈夫です 人は, 言葉を使い始めた瞬間から考え方が変わり始めます

ちなみに, 今回のシリーズをすべてまとめると, 本一冊分程度の分量になります つまり, 最後まで見てくださった皆さんは, 本を一冊読んだのと同じ知識を身につけたことになるのです

だから, 何度も見返して丸暗記してください!

そしてある日, 本をみると気づくはずです

「前は難しかった文章が, 普通に理解できる」

その瞬間, 世界の見え方が少し変わります

それが 教養が身につく瞬間です