リスクの優先順位
何を優先に考えるか(お客・従業員の別を問わず)
1.生命
2.重篤(死の危険が切迫)
3.重症(生命の危険がある)
4.中等症(入院が必要)
5.軽傷・財産・人権
6.従業員や会社の名誉・財産
常に最悪の事態を想定して そうならないように日頃から気を付けましょう
なぜ 転倒するのか
「これから気を付けます」「真剣に取り組みます」「下肢筋力を鍛えます」などの精神論では事故はなくなりません 想定しないから「事故」なのです 介護の教科書に載ってそうなありきたりな回答はいりません ちゃんと 転倒について考えてみましょう
動くから
寝たきりの方はコケません 「動く」から転倒するのです あたりまえですね
トイレや食事などの日常生活動作は仕方がありませんが 例えばこういう事例はどうでしょう
訪問したヘルパーが忘れ物をして まだ玄関にいたから 呼び止めようと 慌てて玄関に向かったら 転倒した
目も当てられませんね。。。こうならないためにも
本来だったら動かなくてよかった
こういった原因を考えられるだけ潰していきましょう どういったことが考えられますか?一緒に考えてみましょう
- 戸やドアをきっちり閉める
- 火の元や家電のスイッチは切っておく
- 郵便物などを回収してあげる
- ヘルパーが忘れ物をしない
- 玄関をしっかり施錠する など
チェックしたことをお客さま自身に伝えなければ意味がありません
お客さまが本来やらなくてもよい仕事を残さない
チェックしたことをお客さま自身にちゃんと伝える
段差が見えていないから
あなたはコケたいですか?嫌ですよね 誰にでもわかる大きな段差が直接的な原因で 人はコケないものです 本人が見えるからです
転倒するのは 決まって 意識していないものに足をつまづきます 運転でぶつけた時に似てますね
お客さまの同線上に転倒のきっかけになるようなものがあったら 排除しましょう
どういったものが考えられますか?一緒に考えてみましょう
- 電源コード
- カーペットの継ぎ目
- 敷居
- リモコン
- かばん など
足元が滑るから
これもあたりまえ だけど ちゃんと現場で対策が取られていないのが現状です 足元が滑る原因を考えてみましょう
- 床面に落ちたチラシ
- 靴下
- スリッパ
- 床面が濡れていた
- 床面に食用油がこぼれていた
- 掃除後 乾いていなかった など
床面はちゃんと片付けておく
滑り止めのついたシューズ・スリッパ・靴下を提案しましょう
自分の運動神経が分かってないから
介護の世界はみんな「下肢筋力の強化」をいいますが あなたは筋トレしてますか? している人は少ないですよね
お客さまも同じこと よだきいことはみんなしません キツイことはみんなしません 他人の言う通りにしません
人は ひごろ使わない機能は 驚くほど落ちていきます そして そのことに本人は気づきません そう まるで
運動会で 張りきって 足がもつれてコケるお父さん
これと同じことが起きているのです 足がもつれる原因は 自分の足が思ったより動かなかったから 多くの人は 自分の「老い」に気づきません 足がもつれるとわかっていて 全力疾走する人はいませんよね?
これと同じように お客さんにも伝えましょう
ただ 言いづらいよね? だったら 歩いている状態を動画で撮って 見てもらいましょう かなり効果がありますよ 訪問で忙しかったら デイケアなどと連携して提案してみましょう
運動を促すより先に
歩行状態を動画で本人に見てもらいましょう
行く手を阻む障がいがあるから
アルツハイマー型認知症・知的・精神障がい等で 動いたらいけない状況で動くお客さんは一定数いらっしゃいます 点滴中に針を抜いたり 骨折していることを忘れて出て行ったり 困りますよね
だけど 考えて! 身体拘束は 法律に違反する可能性があります
【身体拘束の例】
・ベッドから降りられないようにベッド柵をする
・車いすから動かないようにヒモで縛る
・経管栄養・点滴などを抜かないように手足を縛る
・徘徊しないように施錠する
・オムツはずしをしないようにミトンを使う
・落ち着かせるように睡眠剤や向精神薬を過剰に服用させる
在宅では少ないですが 似たようなことを目にしたらお客さんに伝えましょう
さて 身体拘束は転倒防止に効果はあるでしょうか?
答えはNOです 在宅のお客さまは ある程度自分で動ける方がほとんどだからです
なぜでしょう? 自分に置き換えて考えればすぐ分かります
あなたは運悪く両手を骨折し 病院に入院しています
ふと夜中に目が覚め トイレに行きたくなりました
見ると ベッドから落ちないように 四方ベッド柵で囲まれ ご丁寧にヒモで結ばれています
人を呼んでも誰も来ません オムツもしていません
この状況であなたはどうしますか?
私なら 何とか起き上がって ベッド柵を超え トイレに行こうとします
お客さんの顔を想像してみて! ベッド柵1つでトイレを諦めるような性格の方ばかりですか?「推して知るべし」ですよね
お分かりでしょうか 不用意な身体拘束は さらなる事態の悪化につながりかねないのです ベッド柵がなければ40cmなのにベッド柵で1mの段差になってしまうのです 1mから高齢者が転倒し頭を打撲したらどうなりますか? わかりますよね
行動抑制は さらなる惨事を呼ぶ
なぜ ケガをするのか
施設も在宅も「転倒率」はたいして変わりません なぜ転倒が問題になるかといえば ケガをするから だったら ケガしない方法を考えてみましょう
転倒してもケガしない環境整備
発想を転換して 万が一転倒しても ケガしない対策も有効です 具体的には
・転倒したらケガする大きな段差を作らない
・テーブルの角や壁を丸くしておく
・床面を柔らかくしておく
などです ただしこれはヘルパーではできません お客さまに提案してみましょう
ベッドの高さは膝の高さに
オムツ交換など 介助するときは ベッドの高さはヘルパーが腰を痛めない高さにしますが 退出時はベッドの高さを下げることを忘れずに! 基本は お客さまが立ちやすいよう膝の高さ程度が目安です
車いすの方なら 移乗しやすい高さに
まとめ
「ある程度は仕方がない」は家族心得 プロなら事前に防ぐ方策を
- できることは「環境整備」
- 不用意に動く原因をつぶす
- お客さまに見えない段差を解消する
- 床面の滑りそうなものを排除
- 滑り止めの履物を提案
- 日頃からお客さま自身の身体能力を知ってもらう
- 不用意な行動抑制はしない
- 万が一転倒してもケガしない環境整備を
- ベッドの高さは下げて退出