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「一番は温度!」

初めに結論を言います

熱中症対策の一番は「温度」です

「こまめな水分」「塩分も必要」「換気」「日差し対策」・・・
いや 熱中症の本質は温度 気温で体温が上がりすぎた状態のこと だから一番は「温度」です

厚労省のパンフレットを見てください

まず真っ先に「エアコン等で温度をこまめに調節」と書いてますね

 水分・塩分・換気・日差し・・・実はどれも温度を下げるための方策です

「熱中症対策」なんとなく分かった気になっていませんか? 何事も本質が大事 今日ここで キチンとした理解をしましょう 大丈夫 「温度」さえ押さえておけば スムーズにわかるはずです!

マニュアル編

高齢者向け熱中症対策

  1. 冷房を使おう!:室温・体温を下げる
  2. 水分補給:血液を増やして体温を下げる
  3. 外出時間と服装の調整:体温を上げない
  4. 日射遮蔽(カーテン・すだれ・帽子・日傘):室温・体温を上げない
  5. 塩分・電解質補給:発汗により低ナトリウム血症が起きる(詳細は後述)
  6. 室内換気:室温を上げない
  7. 熱源(風呂・調理)の使用を短時間に:室温・体温を上げない

※「5.」以外はすべて「温度」に関係

ヘルパー自身の熱中症対策

  1. 移動時・訪問時は冷房を使う!
  2. 移動前後の水分・塩分補給
  3. 冷房が使えない現場では保冷グッズ携帯
  4. 通気性の良い服装と替えの衣類持参
  5. 外出時は帽子・サングラス着用・日陰移動を意識

※ジュースは逆効果!

熱中症になったら?~対応マニュアル~

リスクの高い順に注意すべき症状と対応

  1. 意識障害・返答の遅れ・受け答えが曖昧
    • 救急搬送を即時判断 返事が不自然なら即冷却・通報
  2. 体温上昇・皮膚が熱い/赤い・汗が出ない
    • → 胸鎖乳突筋部・腋窩・鼠径部などを氷や保冷剤で冷却(熱発時のクーリングと同じ)
  3. ふらつき・脱力・座り込む
    • → 涼しい場所へ移動し 安静+冷却+経口補水
  4. 嘔気・頭痛・吐き気
    • → 脱水を疑い 冷却と経口補水液を少量ずつ摂取
  5. こむら返り・大量の汗
    • → 軽度なら涼しい場所へ移動し経口補水・休憩で様子観察

解説編

◆ 熱中症の現状

  • 高齢者の熱中症搬送は約5.6万人(R6年5月~9月:消防庁統計)
  • 高齢者が全体の57%以上
  • 宮崎県の高齢者の熱中症搬送は663人 うち高齢者は57%以上
  • 多くが「自宅内」で発症
  • エアコン未使用・脱水・冷房忌避が主因
【確認問題】
Q:熱中症で救急搬送される人の多くは 部活や体育授業中の子どもですか?
A:違います 57%以上は高齢者です

Q:熱中症で搬送された高齢者の多くは 炎天下の外出ですか?
A:違います 多くが「自宅内」で発症

Q:熱中症で搬送された高齢者の原因は 水分接収嫌いと あと一つは何ですか?
A:冷房嫌いです

◆ 熱中症のメカニズム

●運動しないのにナゼ体温が上がる?

「代謝」「免疫反応」「消化」「震え」など理由はいくつもあります

  • 代謝:生命維持のためのエネルギー消費
  • 免疫反応:発熱・炎症など 細菌やウイルスなどと戦う反応
  • 消化:栄養素を消化・吸収するための熱生産
  • 震え:脂肪を燃焼するための本能

※冷たいジュースは 一瞬身体を冷やすが 消火による熱生産が起きるので 逆効果!(エナジードリンク・加糖されたスポーツドリンクなどは要注意!)

● そもそも熱中症とは?

発熱量>放射能力

結果: 体温上昇 → 中枢機能の破綻

要するに 人それぞれの「平熱」より気温が高く 「平熱」以上に体温があがることによる障害
過剰な発汗により「低ナトリウム血症」になったりする

● 塩分・電解質不足による熱中症のメカニズム

熱中症になった結果 電解質不足になる!
逆に 「電解質不足」になったら 熱中症になることもある!

  • そもそも自然界には 濃い液体は水を引き付けて一定にする性質がある(浸透圧)
  • 発汗で「ナトリウム」「カリウム」などの電解質が失われる
  • 水分補給だけでは 血が薄くなる (電解質濃度の低下・浸透圧の異常)←低ナトリウム血症
  • 血が薄くなると 筋肉運動や神経伝達に支障が出て こむら返り・けいれん・意識障害を引き起こす
  • 細胞が”ふやける” つまり細胞が水を吸ってしまい 血液量が減少 血が減るとさらに体温調節ができない

● 身体を冷やす仕組み

  1. 皮膚の毛細血管拡張による放熱
    ”エアコンの室外機”効果 外気で血液の温度を下げる
  2. 発汗とその気化熱
    ”打ち水”効果
  3. 呼吸による熱排出
    効果は10%未満

● 主な危険因子

  • 冷房の忌避:ダイレクトに体温が上がる
  • 水分補給の忌避:血が減って”エアコンの室外機”効果が薄れる
  • 塩分不足:ダイレクトに低ナトリウム血症になる
  • 高湿度と無風:発汗の”打ち水”効果
  • 日射と断熱性の低い住宅:室温が上がる
  • 感覚鈍麻・判断力の低下:暑いのに気づかない
  • 服装:通気性が悪いと体温が下がらない
【確認問題】
Q:運動せず外出しない高齢者も身体から発熱するのはナゼ?
A:代謝・免疫反応・消化・震えなど理由はいくつかあります

Q:キンキンに冷やしたスポーツドリンクを飲むのは 熱中症対策になる?
A:効果は限定的 特に糖分の多いものは逆効果 無糖のものは電解質が入っていても吸収されにくため「水」とたいして変わらない

Q:熱中症は、発熱量が放熱能力を上回ることで発症する【○×問題】
A:〇 外に熱が逃げないため 体温が上がり 中枢機能の破綻が起こる

Q:低ナトリウム血症になると、筋肉や神経の働きが一時的に良くなる【○×問題】
A:× むしろ働きが低下し けいれんなどを起こす

Q:毛細血管を広げて皮膚に血液を送るのは、身体を冷やすための仕組みのひとつである【○×問題】
A:〇 皮膚の毛細血管拡張による放熱 ”エアコンの室外機”効果です

Q:冷房を使わないことは、熱中症リスクを下げる【○×問題】
A:× むしろ最大の危険因子

よくある質問

Q. 熱中症と脱水症は同じ?
→ いいえ
脱水症:水分と電解質が不足した状態
熱中症:体温が上がり中枢が機能障害を起こした状態
脱水症が進行すると熱中症につながることがあります

Q. 寝たきりの人も熱中症になる?
→ はい 発汗や排泄による水分・塩分の喪失 部屋の温度管理不良により発症します 特にエアコンを避けている場合はリスクが高くなります

Q. シャワーやお風呂のあとに熱中症になる?
→ はい 入浴による脱水や体温上昇が原因です 水分補給を忘れず 室温管理と短時間の入浴を心がけましょう

Q. 水分を取っていれば安心ですか?
→ いいえ 塩分とカリウムも必要 水だけでは危険

Q. カリウムを摂るには?
→ バナナ・根菜・豆類・小松菜・ほうれん草など サプリだと手っ取り早い!

Q. カリウム制限がある方は?
→ 糖尿病性腎症の方は 医師の指示が優先 経口補水液は注意が必要!

Q. 麦茶は熱中症対策になりますか?
→ ほぼ「水と同じ」です 適切な食事をとっていればOKですが 発汗が多い状況では電解質の補給が必要です

Q. 経口補水液は毎日飲んでもいいの?
→ 発汗が多い時に適していますが 塩分濃度が高いため 腎機能や高血圧がある方は医師に相談を

Q. 冷房は体に悪いのでは?
→ 命を守る道具です 適切な設定で使用してください

Q. 屋内でも熱中症になりますか?
→ 温度が高ければ なります

Q. マスクのせいで熱中症になりますか?
→ 屋外高温時のマスクは補助的リスクになります

まとめ

熱中症は「暑さ」「脱水」「環境管理の失敗」が重なることで発症します 高齢者は特に感覚が鈍く クーラー嫌い・水分嫌い・夏でも寒がり こんな方が多いですよね 介護者の観察と判断力が命を守るカギです “リスクの高い順”を覚えておくと 現場で即行動できるようになりますよ