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この雑談パートでは, 業務に直接関係はないけど, 知っておくと便利な知識や考え方をお伝えします 「こうしなさい」ではなく 「考え方のレパートリーを増やす」と思って, 肩の力を抜いて, 気楽に見てくださいね!
頑張らない人たち

- リハビリしないと歩けなくのに やらない利用者さん
- 認知症なのに 接し方を変えないご家族
- 掃除する気ないのに 「掃除できるようになる」と無意味な目標を立てるケアマネさん
- 研修を受けても 自己流を変えない介護員さん
職場では, 上司や部下・お客様・ご家族に対して「考えを変えてほしい」「行動を改めてほしい」と思う場面が多くあります しかし, 一向に変わらない
次にでてくる言葉が「私, 言いました!」「私, 伝えたよね?」です
あなたは確かに「リハビリしないと歩けなくなりますよ!」とお客さまに言ったのでしょう しかしそれでも, お客様がリハビリをしない, つまり相手が変わらなければ「どうして伝わらないの?」と悩んでしまいますよね そうしている間にも時間だけが無駄に過ぎ, お客さまの要介護状態はどんどん悪くなる… 歩けなくなったから「リハビリしないともっと悪くなりますよ」 それでも, お客さまは変わらない… そうやって悩み続けると, 介護をする私たち自身が疲れ果ててしまいます
ここで1つ重要なことをお伝えします それは――他人は変えられないという事実 ここでは「他人を変えたい」と悩んでいる人に向けて, お話しいたします
「素直で正直な人」ほど 苦しい?

- リハビリしないと歩けなくのに やらない利用者さん
- 認知症なのに 接し方を変えないご家族
- 掃除する気ないのに 「掃除できるようになる」と無意味な目標を立てるケアマネさん
- 研修を受けても 自己流を変えない介護員さん
仕事であなたはこんな風に悩んでいるかも知れませんね 例えば「リハビリしないと歩けなくなる」は, 正しい あなたは間違っていません でも相手はしないんですよね? だから悩んでしまう ここで, ちょっと立ち止まって考えてみましょう
「本当に悩んでいるのは, 誰ですか?」
多くの場合, お客さまは楽観的に考えています そして, 一番悩んでいるのは, そう あなたなんです! 他人のことなのに, 本人よりあなたの方が悩んでいるなんて, 何だかあべこべだと思いませんか? そうなんです この手の話に共通するのは「どうにかして相手を変えたい」というあなたの願いがきっかけなのです
というより, 人の悩みのほとんどは「どうにかして相手を変えたい」という願いです どういうことでしょうか?
例えば 介護以外の悩みをあげてみると
- 旦那の浮気の悩み → 旦那が変われば解決!
- 上司のストレス → 上司が変われば解決!
- 恋愛の悩み → 想いの相手が変われば解決!
- 経済的な不安 → 上司があなたをちゃんと評価すれば, 給料UP → 問題解決!
どうでしょうか 世の中のほとんどの人の悩みは「人間関係」に集約されるのです そして「人間関係の悩み」は, その問題の当人が変われば, 問題解決するんですね
では, 現実はどうでしょう? 理不尽に思うかも知れませんが, 「どんなに言っても, 人間はなかなか変わらない」つまり「人間って外からの圧力では変わらない」 これが真実です
でも中には, 「本人が改心した事例を知っているよ!」と思うかも知れません それは確かにその通り
では, 変わることができた人には, 何が起きたのでしょうか? 本人が「自分で必要だ」と気づかない限り、行動は変わらないのです だからこそ「相手を変えよう」とあなたが悩めば悩むほど, 相手に思いが届かず, 苦しくなってしまいます
つまり, 素直な人や 正直な人は 「相手のここをこう変えれば解決するのに!」こういう, 優しい気持ちが強ければ強いほど, 相手は変わらないので, ストレスが溜まってしまうんですね
行動変容は「本人の気づき」から始まる

悩みの多くは「相手に変わって欲しい」という, 優しいあなたの気持ちや願い だけどあなたが何遍言っても, 言葉では相手は変わらないから, あなたはもっと悩んでしまう
しかし, 行動が変わる人もいます では行動変容ができる人は, できない人と何が違うのでしょう? それは, 行動変容とは相手が「必要性に気づいた時」に初めて始まるということです
例えば
- 転倒して痛い思いをした
- 杖や歩行器がないと歩けなくなった
- 歩いてタバコを買いに行けなくなった
- 趣味の外出ができなくなった
など
要するに, 「痛い目に遭ったり」「怖い思い」などで本人が気づかないと, 他人は変わることができません
ですから, 当の本人ではない他人の私たちにできるのは, 無理に相手を変えることではなく, 相手に気づきのきっかけや環境を整えることなのです というより, 他人を変えるにはそれしかありません どんなに言葉で伝えても, 外からの圧力に人は動かされないのですから…
例えば, 「お客さまにリハビリをしてほしい」とあなたが願うのだったら…
- リハビリしないと歩けなくなる, という資料をお渡しする
- 「困ったらここに連絡してください」と紙を貼っておく
- 通所リハビリや訪問リハビリなど, いくつかの選択肢をあらかじめ準備しておく
など
こんな感じで, 気づきのきっかけや環境を整えます 「え?そんなことしかできないの?」と思うかもしれませんね だけど, こうした工夫は, 本人が動き出す土台になるのです 人間は本気になれば, 想像以上の力を発揮するものです 例えば本気でリハビリすれば歩行状態は一気に改善するかもしれません 逆に本人にやる気がないのに, 何べんもしつこく言うと, ”ウザ”がられて, あなたの話を聞いてくれなくなりますよ
行動変容のステップ

人が行動を変える時には, 次の段階を踏むと考えられています
- 無関心期:まだ問題に気づいていない
- 関心期:少し問題だと思い始める
- 準備期:変えようと計画を立てる
- 実行期:実際に試してみる
- 維持期:行動が習慣となる
参考:「行動変容ステージモデル」厚生労働省https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-07-001
この流れを理解することで「なぜ相手に伝わらないのか」「なぜ相手は動かないのか」が整理できます
ステージ別:あなたができること

無関心期(まだ問題に気づいていない段階)
相手はまだ問題に気づいていません 必要性を感じていません だからこの時期に”正論”をぶつけると反発を招きます
できること
- 相手の話をまず受け止める
- 否定せずに情報や選択肢をさりげなく提示する
- 「困ったらここへ」といった環境を整えておく
関心期(少し問題だと思い始めた段階)
本人の中に「このままでは”まずい”」「変えた方がいいかも」という”揺れ”がある時期です
できること
- 共感しながらメリットとデメリットを整理する
- 小さな一歩を考えられるように促す
- 「あなたならできそう」と自信を支える
準備期(計画を立てている段階)
行動に移す直前の段階です ここでの支援が実行につながります ケアマネさんがケアプランを立てるのはこの時期からです
できること
- 必要な道具や手続きを一緒に確認する
- 行動のハードルを下げる工夫をする
- 最初の一歩を小さく区切り, 成功体験を積ませる
やっちゃダメ
- 相手の話を聞かない
- 法律や知識で「これをやらなきゃダメ」と一方的に押し付ける
- しつこく何度も勧める
- 無関心期や関心期に, ケアプランを作る
まとめ

- 他人は外からの力で変えられない
- 行動が変わるのは「本人が気づいた時」だけ
- 私たちができるのは「環境を整えること」と「気づきを待つこと」
これらの「原則」が分かっていれば, 私たちがやるべき行動は自ずと見えてきます
- リハビリしない利用者さん → 例)ケアプラン以前に, 情報提供や環境を整えておく
- 接し方を変えないご家族 → 例)行動変容のメリット・デメリットの情報提供を行う
- 「掃除できる」と無意味な目標を立てるケアマネ → 例)なくても困らない支援をしない
- 自己流を変えない介護員さん → 例)研修を義務化せず, 研修のメリットを提示する
研修の場でも日常業務でも「相手を変えようとする」のではなく「相手の気づきを支える」という姿勢を意識することが, 案外近道かも知れませんよ! それが無理のないコミュニケーションと職場の信頼関係づくりにつながります