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「書くことない」から卒業しよう!
要支援のお客さまは 比較的お元気な方が多く 上手に支援すれば介護保険から卒業できる方もいらっしゃいます これがいわゆる自立支援ですね
しかし お客さまやケアマネさんの中には
- 長寿のご褒美に, 税金で安くヘルパーが使える特権を得た!
- 口では「自立支援」と言うが 内容は「家政婦さん」「女中さん」のようにヘルパーを使う
- お客さま本人が動くケアプランになっていない
このような方がとても多いです
このような認識だと, ヘルパーの支援中にお客さまご自身は全く動こうとしません ヘルパーが掃除をしている間, ずっと座っているお客さまが多いのではないでしょうか?
お客さまご自身が, 全く動かないなら, 障がい・病状・ケアの状況は分からないですよね?
「書くことがない」と感じたり, 「気をつけて 生活しておられました」みたいな どうでもよい記録になってしまいます
ヘルパーに限らず, 働く人の8割以上は文章を書くのが苦手です
そして, 文章を書くのが苦手な人のほとんどが次の状態です
すべてを記録しなければならないと勘違いしている
↓
訪問中の出来事すべてを記録するのはムリ!
↓
全体的な「まとめ」文章になる
↓
サ責が見ると「フワッとしてとりとめのない, どうでもいい文章」になってしまう
まるで, 小学生の読書感想文ですねーー
コツはこうです
文章を書くコツ
- まとめなくていい!
- 出来事すべてを書かなくていい
- 「具体的」かつ「事実」のうち1つか2つを書けばよい
といっても, 抽象化した講義は聞き飽きた事でしょう ここでは, 具体的に, 実際にうちのヘルパーの記録を例に添削していこうと思います
1. 【まず確認!】
「要支援」か「要介護」か?
今回は要支援向けの方法です!
基本姿勢
- 要支援 → お客さまにやってもらう!
- 要介護 → ヘルパーがやる!
🔹お客さま本人にできない動作があれば, 一部支援が要支援!
要支援のお客さまは, 掃除してないのはお客さまのせいです ヘルパーの手抜きではありません
お客さまが掃除個所を決め, お客さまが掃除し, お客さまにできない動作のみをヘルパーが手伝います
この基本がわかっていないケアマネさんも散見されます 私たちがしっかり理解しておきましょう
2. 【NG記録あるある】
感想文・おせっかい・不要な指示は禁止!
介護記録は, 目標に沿って, 客観的な事実のみを書くのが基本
ヘルパー感想やおせっかい・不要な指示は書きません
NG例 | なぜダメ? | 書き直し例 |
---|---|---|
「〇〇の掃除をしました」 | 作業内容は目標と関係ない! 本人の状況を書く ※掃除個所は項目にチェック | 「本人は〇〇をした」 「本人は掃除しなかった」 |
「〇〇が汚れていました」 | いらん世話! 要支援の場合 汚れてるのは本人のせい | 「〇〇の掃除に気が付いていないようだった」 「本人は〇〇を掃除していなかった」 |
「次のヘルパーは〇〇を掃除してください」 | いらん世話! 要支援の場合 掃除個所は本人が決め 本人にできない動作のみを手伝う | (記録不要) |
「〇〇さんに褒められました」 | 子どもか! ヘルパーの感想は不要 | (記録不要) |
3. 【記録のカギ】
必ず「目標」を見よ!
- 訪問する前に 必ず目標を確認する!
- 目標:システム→基本情報→備考欄
- 目標が書いていなければ サ責に訊く!
※必ず訪問する前に確認しましょう
4. 【分類する】
「目標」を具体化せよ!
ここが一番大事なところです
確認した「目標」を 具体的に以下の分類に当てはめて考えましょう
- BADL(基本動作):室内歩行・起居動作・屋外歩行・外出頻度・排泄・食事・入浴・着脱衣
- IADL(応用動作):掃除・洗濯・買い物・調理・整理・ゴミ出し・通院・服薬・金銭管理・電話・社会参加
BADL(基本動作) | 説明 |
---|---|
室内歩行 | 杖・伝え歩き・介助・ふらつき・マヒ |
起居動作 | 起き上がり・たちあがり・福祉用具・マヒ |
屋外歩行 | 何分・何m・雨天など 耐久性や機能性 |
外出頻度 | どこに・週何回・バス・タクシー・家族 |
排泄 | リハP・尿漏れ頻度・便秘や下痢 |
食事 | 食事形態・偏り・回数・嚥下状態・義歯・完食・飲酒 |
入浴 | 週何回・洗身・洗髪・浴槽浴・シャワー浴・またぎ動作 |
着脱衣 | イスの有無・関節の可動域・季節に応じた服 |
IADL(応用動作) | 説明 |
---|---|
掃除 | 掃除用具・掃除場所・家族支援・できない動作・意欲 |
洗濯 | 洗濯機・物干し・取り込み・収納・週何回・できない動作・意欲 |
買い物 | 買い物リスト・手順・場所・移動手段・家族支援・収納・できない動作・意欲 |
調理 | 元来していたのか・メニュー決め・下ごしらえ・包丁・コンロ・味付け・配下膳・洗い物・意欲・できない動作 |
整理 | 床面・眼鏡・補聴器・義歯・衣類・書類・できない動作・意欲 |
ゴミ出し | 曜日感覚・分別・運搬方法・ゴミ捨て場・できない動作・意欲 |
通院 | スケジュール確認・移動手段・医師との意思疎通・できない動作・意欲 |
服薬 | のみ忘れ・日付感覚・時間間隔・管理方法・週何回忘れるか・意欲 |
金銭管理 | 金銭感覚・通帳管理・パスワード管理・できない動作・意欲 |
電話 | 待ち受け・電話を掛ける・家族だけできる・理解度・意欲 |
社会参加 | 家族以外の関わり・自治会・サークル・友人・知人・意欲 |
例えばこんな感じ
目標:「体調が整い, 買い物ができるようになる」
この目標を分類してみましょう
「体調が整い」に目が行きがちですが 目的はあくまで「買い物」 買い物という目的を達成するための「体調」ですので この場合は「買い物」に分類します
お分かりになりましたか?
それでは 実際に練習をしてみましょう!
分類の練習
実際に以下の目標を分類してみましょう 正解を探すことよりも 仕事を単純化することに留意します
Q01:「掃除道具の準備や身の回りの整理整頓が出来る様になる」
⇒掃除・整理
Q02:「ふらつきに注意しながらクイックルワイパーができる」
⇒掃除
「ふらつき」に目が行きがちだが 目的はあくまで「掃除」
Q03:「生活空間の整理整頓ができる」
⇒整理
「生活空間」という意味不な言葉に惑わされないように!
Q04:「身体に負担の無い範囲で, 自身の保清と自宅内の整理整頓を行う」
⇒入浴・整理
「身体に負担の無い範囲で」は当たり前だから無視!
この文章のミソは「保清」と「整理整頓」
保清≒入浴 整理整頓≒整理 と考える
Q05:「移動動線の環境を整える」
⇒整理・室内歩行
室内での移動を安全に行うために, 室内の整理も必要 と考える
Q06:「買い物メモが書ける」
⇒買い物
「書く動作」は買い物に行く目的
Q07:「歩行器でゴミ出しができる」
⇒ゴミ出し
Q08:「自分で出来る家事を続け自分のペースで生活が出来る」
⇒不明
目標の約50%はこういった意味不明な文章
不明の場合は サ責に相談
5. 【記録文例】
こう書け!
〇明確な目標に分類し その目標ができているかを書く
- ✅「お客さまが○○を行った」
- ✅「促したが○○の理由で実施せず」
- ✅「〇〇を支援し, 残りはお客さまが実施した」
こんな感じで具体的に書いていきます
以下は, 実際のヘルパー記録から引用しました 具体的にどう改善するか, 学習しましょう
掃除
声かけながら掃除支援
←本人の行動が不明
いつもの掃除支援
←「いつもの」が漠然として具体的でない
声かけすると〇〇をされた
声かけしたが掃除しなかった
準備をすると, お客さまが居間のみ掃除機かけを行うことができた
買い物
買い物リスト確認し代行
←お客さまの行動が不明瞭 買い物リストは誰が作ったのか?
買い物帰宅し声かけて商品をなおす
←お客さまの行動が不明 「収納」は一緒にできたのか?
既にお客さまが買い物リストを作っていた
お客さまに聞きながら, 共に買い物リストを作成
商品のうち冷蔵庫内のものはお客さまが収納
声かけしたが, お客さまは収納しなかった
入浴
体調気をつけながら, ご自分でシャワー浴 1時間半かけてされたとの事
←何の病気に留意したのか不明
声かけながらシャワー浴して頂き,
←主語がヘルパーになっている 何のための声かけ?
精神的な不安か, 留意すべき病気があるのか不明
その間掃除支援
←記載不要(チェックでよい)
ご自身でシャワー浴 急な血圧の変動に留意できていた
ご自身で浴槽浴 またぎ動作時の転倒予防には, 意識できていなかったとの事
訪問前 ご自身で入浴 傷が濡れないよう, 入浴に1時間半を要したと話された
整理・室内歩行
※転倒予防のために室内整理をセットで目標を立てることもある
足とりふらつきあるので
←最初から分かっているので不要
転倒等気をつけて移動されてる様子
←具体性にどこに気をつけている? 場所か? 動作か? 動作なら, 手伝いか? 腿上げか?
玄関の段差につまづかないよう, 必ず手をついてまたいでいる
全体的に腿上げを意識していると話されていた
電源コードにつまづかないよう, つま先上げ運動をしていた
カーペットの切れ目を意識せず歩いている様子だった
その他記録
体調お変わりない様子
体調気をつけられている様子
←基本的に不要な文章
体調管理が必要な場合, 病名に応じた記録に
(例:脊柱管狭窄症→腰痛 心不全→疲労・浮腫・息切れ 脳卒中→しびれ・頭痛 など)
共に掃除を行ったが腰痛の訴えは聞かれなかった
先日家族と買い物に行ったが, 特に疲労はなかったと話された 訪問中に目立った浮腫は見られなかった
この一週間, 手足のしびれや頭痛はなかったとのこと
昨日担当者会議あったとの事
←不要な文章(サ責・ケアマネ等は知っている)
強いて必要なシーンは, 認知症にて短期記憶の欠損がある場合か
先日の担当者会議があったことは覚えていたが 内容については理解した様子はない
訪問前 お友達来訪されてたとの事
←目標に「社会参加」でなければ不要
書くことが無くて 空白を埋める必要はない
昨日病院受診され特に変わりなかったとの事 市役所の健康診断も受けられたとの事
←「変わりなかった」のは本人の主観
昨日, タクシーで定期受診および, 後期高齢者健診
昨日, 家族と定期受診・高齢者健診 特に変わりなしとのことだが, 検査結果は次回受診
最近調子良いとの事ですが
←具体的にどこの調子がよいと感じているか? 単に飲酒したいいいわけでは?
その分お酒の量増えてる様子
←具体的にどの程度増えたのか?
声かけ
←何を声かけたのか不明
最近調子よいとの事だが, どこが調子か尋ねると「全体的に」と返答 飲酒量は2週間で5合のところ, 1週間で5合に増えていた 肝機能障害には飲酒を控えるよう伝えた
6. 【目標が不明な場合】
→すぐ提責に相談!
- 目標なき支援=独断的な支援になるリスク
- 曖昧な指示のまま書かず、具体化を依頼するのがプロの記録者
7. 【まとめ】
“作業報告”ではなく“支援の証拠”
ここまで見ていただき, ありがとうございました
介護記録は単なる日誌や報告書ではありません
「お客さまの自立支援にどう役立っているか」を示すケアの証拠であり, 私たちヘルパーの“専門性”を形にする大切な手段です
要支援のお客さまは「できることを維持・拡大していく」ことがゴールです
だからこそ, お客さまが自分でできたこと・できなかった理由と支援した内容・その背景にある意欲や工夫を, きちんと記録することが, ケアの質と信頼につながります
✅ 最後に 今日から実践できる3つのルール
- 必ず「目標」を見よ!
→目標が不明なら サ責にすぐ確認 - 「目標」を分類せよ!
→目標を具体化することで 書くべきことが分かる - 1~2個でいい! お客さまの「具体的な事実」を記録!
→「まとめ」「ヘルパーの感想」「作業内容」は不要
「書くことがない」ではなく
「どの事実が, 自立支援につながるか?」と考える視点が, プロとしての記録力です
記録はあなたの仕事ぶりを見える化し, お客さまの未来をつくる, かけがえのない証言
さあ今日から「書けるヘルパー」へ一歩踏み出しましょう
迷ったらまたこのページに戻ってきてくださいね 応援しています!