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それ本当に認知症?

認知症のような症状の病気は何百種類もあります 私たちにそれを見分けることはできませんが ある程度大まかな知識をつけて 適切な病院を受診しましょう

認知症に似た症状や病気

認知症の症状に似た病気をいくつか挙げてみます

病名等症状解説
老化単なる物忘れ 日常生活への支障がなく 新しいことを覚えられる人は認知症とはいいません
統合失調症 幻覚、妄想
意欲低下 感情表現が少なくなる
 脳の様々な働きをまとめることが難しくなる病気 発症率は推定0.7%
うつ病心気妄想(病気を過剰に軽く考えたり 逆に病気と強く思い込む) 罪業妄想 貧困妄想 気分障害の一つ 発症率は推定6%
薬物による中毒 せん妄 ふらつき 無気力 記憶力・注意力低下などさまざま 他の病気で服用しているお薬の副作用で起こることがあります
躁病誇大妄想 自分の能力や家柄などを過大評価する妄想 発症率はうつ病の1/6~1/7
妄想性障害実際にはない嫉妬 好かれている 寄生虫がいるなど 誤った強い思い込みが持続 誤った強い思い込みが持続する
発症率は推定0.2%
アルコール離脱・精神病小動物幻視・嫉妬妄想 虫や小動物の幻覚が見える
家族の浮気妄想など

単なる物忘れでは?

単なる物忘れと認知症の大まかな違いはこのようなものです

認知症老化による物忘れ
過去の経験したことそのもの自体忘れる
例:食事を摂ったことを忘れる
過去の経験の一部を忘れる
例:食事のおかずを忘れる
忘れていることの自覚がない忘れていることを自覚している
約束をしたことをいつも忘れる関心のない約束は忘れる
間違っていたらつじつま合わせの作り話をする間違っていたら思い出そうとする
もしくは言い訳する
日付が分からない日付を間違える
物を失くしたら盗られたと妄想する物を失くしたら探す
日常生活に支障がある
例:食べ物じゃないものを食べようとする
例:火の始末が気にならない
日常生活にそこまで支障はない
例:食べ物の区別はついている
例:他のことに集中すると火の消し忘れる
ヒントを出しても思い出せないヒントがあると思い出せる

誰でも 関心が薄い事柄は覚えられません 例えば 風呂嫌いな方が年をとって風呂に入りたがらないとしても それだけで認知症とは言いきれません よく観察し 判断しましょう

認知症とは

問題になる認知症とは 異食行動や火の不始末など 生活に支障があるレベルの症状の方です
主な認知症の原因疾患について 次章で触れます

長谷川式簡易知能評価(HDS-R)

認知症の簡単な検査法があります これで認知症とは言い切れませんが 今でも多くの病院や介護施設などで使われています ここにリンクを張っておきますね リンク先はこちら
多くの場合 ほぼ満点だと思います 逆に言えば 認知症とはそれほど顕著な症状ということです

主な認知症

認知症は「器質性精神障害」です
脳そのものの器質的な病変 つまりCTやMRIなどの画像診断で 明らかに形に異常があるもの および身体疾患による脳への二次的障害によって 何らかの精神障害を起こす病気の総称です
記憶障害や見当識障害など認知面にあらわれる症状とともに幻覚・妄想・興奮などの症状もよくみられます

主な原因疾患説明
アルツハイマー病認知症の多くはこれ 神経の変性によって少しずつ認知機能障害が進行 同じ話を何度もする 何度も同じことを聞く 日にちの感覚があいまいになる 人や物や場所が分からなくなる など
脳血管性認知症脳梗塞や脳出血などの脳血管障害に伴って現れる 障害された脳の部位の機能が丸ごと損なわれるイメージ したがって部位によって症状はさまざま 感情コントロール 言語 実行機能 ものの使い方 空間認識 など
レビー小体型認知症わりと最近注目されはじめ アルツハイマーに次いで多いと書いてある教科書もあるくらいです レビー小体によって脳細胞が徐々に減少していく 幻視 パーキンソンみたいな症状 日や時間帯によって入れ替わる 睡眠時の異常行動など
前頭側頭型認知症前頭葉や側頭葉前方の萎縮 実行機能障害 他人の表情を理解する能力 理性や感情コントロールがきかない 同じ動作を繰り返す など

これらをいちいち覚える必要はなく 診断は医師しかできません ただ 明らかに「単なる物忘れ」ではないことがお分かりになるかと思います

認知症とわかったところで やることは同じ

コツや魔法の攻略法なんて無い

大事なことは「そういう症状がある」「治らない」ことを知ってちゃんと理解することです

症状対応法
同じ話を何度もする同じ話を何度も聞く
何度も同じことを聞く何度も同じ説明をする
張り紙などの効果は限定的
季節・日にち・曜日が分からないその都度 伝える
日めくりカレンダーなどの効果は限定的
人や物の場所が分からない会うたびに名前を名乗る
名札などの効果は限定的
感情コントロールが苦手
言葉の説明が苦手
「空気」を読む
状況から 目的を推測し 本人に尋ねる
できれば「Yes No」で応えられるように
単語で伝える
空間認識能力段差の解消
危険個所を丸くする
やわらかくする
パーキンソン症状介助する 福祉用具を使う
幻視一緒に確認する
睡眠時の異常行動危険なものを周囲に置かない
実行機能障害介助しながら動作する
単語で伝える
他人の表情の理解が難しい言葉で説明する
同じ行動を繰り返す危険がない限り見守る

大事なことは 「そういう症状がある」「治らない」ことを知ってちゃんと理解することです
例えば 風邪をひいて咳が出る人に「咳をしないように!」って命令するのは 間違ってますよね?そういうことです 何度も同じ話をする症状の方に「何度も同じ話をしないで!」というのは間違いです
あとは それぞれの症状に個別に対処するのみです
一発で解決する「コツ」のような魔法の方法は存在しないことを知っておいてください

強いて言えば 長々と文章で伝えず 単語で伝える ことくらいでしょうか

認知症に対するイメージ

内閣府のある調査では 「認知症になると これまで通りの生活ができなくなる」と思っている方は 16%程度いるようです
一方で多くの方は 「何らかのサポートがあれば生活できる」という認識だそうです 一昔前に比べると ずいぶん世間のイメージが変わってきましたね

調査内容の詳細はこちら

「認知症に関する世論調査」の概要 内閣府政府広報室

https://survey.gov-online.go.jp/hutai/r01/r01-ninchishog.pdf

他の病気や障がいと同じ

例えば 目に障がいのある方は 周囲の人が声で伝えたり 音響用具や点字用具を使えば 社会の中で生活できます
それと同じように 認知症の方も 病気によって障がいされている部分を人や用具を使ってサポートすれば 社会の中で生活できます
認知症だからといって 人格が変わるわけではありませんし 即座にすべてを忘れるわけではありません

これは私の経験ですが 漁師町に生まれ育ったとある認知症の方は 私よりもはるかに早く 正確に魚を三枚におろすことができ 驚いたことがあります
しかし「安心・安全」ばかりを気にして 本人から包丁を取り上げてしまえば 得意だった魚を捌く能力が失われるでしょう
誰にとって「安心・安全」なのか よく考え 本人にとって何が必要なサポートで 何が不要なお節介なのか それと 周囲の人が協力できる範囲とをよく考えて 誰にとっても住みやすい社会であり続けたいものですね

一番大切なこと「自然とあなたの接し方が変わる」

人は誰でも言葉を知っているだけで「自分はその言葉を理解している」と勘違いするものです

例えば「塩分の摂りすぎ」という言葉は誰でも知ってますよね?そして「身体に悪い」と知ってますよね? だけど「塩分が具体的にどう身体に悪いのですか?」と聞かれたらどうでしょう おそらく 答えられる人は そういないのではないでしょうか

同じように介護職員なら「傾聴」という言葉は知ってます 言葉は知っているけど 本当にそれが大事で 理解して傾聴を行っている方 どれだけいるでしょうか? 多くの介護職員は時間に追われ それどころではないと思っているでしょう それは 傾聴の本質が分かってない場合が多いのです

認知症だって同じことが言えます いくら「病名」や「典型的な症状」を知っていたって 私たちに病気は治せません その方に応じた接し方が 毎回できなければ それは理解していることにはなりません
理解したら おのずと「接し方」が変わるものです これが「知る」ということ 「ちゃんと理解する」ということです

一番大切なことは 知ったうえで あなたが自然と接し方が変わる ということです