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虐待を発見したら

  1. 生命の危険を感じたら 心肺蘇生
  2. 重篤・重症・中等症の場合は 救急搬送
  3. 虐待が明らかな場合は 警察に通報
  4. 虐待の疑いがある場合は 提責に相談し 市役所・包括に相談
  5. 加害者に虐待の認識がない場合は アドバイスをする
  6. セルフ・ネグレクトの場合は 市役所・包括に相談し 事業所でできることを行う

小難しいことはさておき まず行動!

高齢者虐待とは

在宅における虐待の定義

〇養護者による高齢者虐待の定義

身体的虐待:高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。

介護・世話の放棄・放任(ネグレクト):高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、養護者以外の 同居人による虐待行為の放置等、養護を著しく怠ること。

心理的虐待:高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

性的虐待 :高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること。

経済的虐待:養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。

高齢者虐待防止法第2条第4項

ただしこれは あくまで「養護者」による高齢者虐待の定義です

「身体的虐待」「ネグレクト」「心理的虐待」「性的虐待」「経済的虐待」
この5つは丸暗記してください


養護者の定義

〇養護者の定義
「高齢者を現に養護する者であって養介護施設従事者等以外のもの」

金銭管理 食事や介護などの世話 自宅の鍵の管理など 何らかの世話をしている者
例えば 世話をしている家族 親族 同居人などが考えられますが 同居していなくても 現に身辺の世話をしている親族・知人等が養護者に該当する場合があります
なお 経済的虐待については 高齢者の親族であれば 養護者に該当しない者も 虐待の主体となりますので留意してください

ようするに 相手が誰であれ「通報」ということです

うちは在宅専門の会社ですので 施設や医療機関等による高齢者虐待についてここでは触れません 関心があるかたは 一番下に参考資料を提示していますので それを参考にしてください


養護者の関係が不明な高齢者の虐待について

高齢者虐待防止法の対象はあくまで 養護者による虐待です
例えば「対等な関係による夫婦間の暴力」「未成年の子どもから受ける暴力」などは対象とはなりません
しかし何らかの権利侵害を受けている場合 介護保険法の地域支援事業における権利擁護事業や老人福祉法上の措置等 つまり 市町村は高齢者虐待防止法に準じた対応をすることになっています
また「DV防止法」や刑法などが適用されることもあります どの法律が優先されるといった決まりはありませんので 担当する「お役所」が変わる可能性はあります

だ・け・ど!
要するに 相手が誰であれ私たちの対応は同じということです

ややこしいことはいいから 虐待を発見したら 即 通報!


セルフ・ネグレクトについて

介護・医療サービスの利用を拒否するなどにより 孤立し 生活行為や心身の健康維持ができなくなっている方 いますよね・・・
そういう方を「セルフ・ネグレクト」状態にある高齢者といいます 彼らは 何らかの支援の手が向かっても「支援してほしくない」「困っていない」などといって 市町村や地域包括支援センターや医療などの関与を拒否します 市役所や包括と葛藤があるお客さんもいれば 救急搬送を拒否するお客さんだっています

自分の意志でそうなっているので セルフ・ネグレクトの方は高齢者虐待防止法の対象外です ですから 支援には困難を伴いますが そこは 私たち在宅のプロの出番です 実際にそういうお客さんは何人もいるので わかりますよね! 私たちは背広組と違って リアルの現場を知っています 私たちは知恵と技術を駆使して できることを行います

具体的には「そうなった背景」「生活歴」「人格」「本人の心情」などを理解し 共感の態度を示し 何とか自宅で生きていける方法を模索しながら支援をします もちろん 生命の危険など重大なことがあったら そちらが優先されます

一応 市町村・地域包括支援センター・社会福祉協議会などは 積極的にかかわるべき努力義務がありますし 本当にどうしようもなくなった場合は市町村による「措置」による保護や 市町村長の権限行使による成年後見制度があります


権利擁護って知ってますか?

権利擁護(けんりようご)とは高齢者や障がい者など 立場が弱いとされている方の権利を守るための取り組みです 主な取り組み例としては 社会福祉協議会が権利擁護活動を行っています
狭い意味では「高齢者の金銭管理を代わりにする」と思われがちですが 本来は人権を守るすべての活動を指します

具体的な虐待例

あまりいい気分はしないと思いますが 具体的な虐待例が厚生労働省から挙げられていますので ご紹介します

ⅰ 身体的虐待

  1. 暴力
    たたく つねる 殴る 蹴る やけどさせる 打撲させる 刃物や器物で外傷を与える
  2. 危険な行為や身体に何らかの影響を与える
    本人に向けて物を壊す 投げる 刃物を近づける 振り回す
    (※本人に当たらなくても暴行罪は成立することに留意)
  3. 利益にならない強制による行為によって痛みを与えたり 代替方法があるにもかかわらず乱暴に取り扱う
    医学的判断に基づかない痛みを伴うようなリハビリを強要する
    移動させるときに無理に引きずる 無理やり食事を口に入れる など
  4. 行動を制限したり 外部との接触を意図的・継続的に遮断
    身体を拘束し自分で動くことを制限する(ベッドに縛り付ける ベッドに柵を付ける つなぎ服を着せる ミトンをつける 薬を過剰に服用させて動きを抑制する
    外から鍵をかけて閉じ込める 中から鍵をかけて長時間家の中に入れない など

身体的拘束についてはそちらの解説をみてね 


ⅱ 介護・世話の放棄・放任(ネグレクト)

  1. (意図的・結果的で有り無しを問わず)介護や生活の世話を放棄・放任し 生活環境・身体・精神的状態を悪化させている
    入浴しておらず異臭がする
    髪や爪が伸び放題だったり 皮膚や衣服 寝具が汚れている
    水分や食事を与えずに脱水症状や栄養失調の状態にある
    室内にごみを放置する 冷暖房を使わせないなど 劣悪な住環境の中で生活させる など
  2. 専門的診断や治療・ケアが必要なのに 必要な医療・介護保険サービスなどを 周囲が納得できる理由なく制限したり使わせない 放置する
    徘徊や病気の状態を放置
    関係職員が受診・服薬・専門的ケアが必要と説明しているのに無視する
    本来は入院や治療が必要なのに 強引に病院や施設等から連れ帰る など
  3. 他の同居人などが高齢者虐待行為を放置する
    孫の暴力や暴言行為を放置する
    孫が無理にお金を奪っているのを放置する など

ⅲ 心理的虐待

  • 脅しや侮辱などの言語や威圧的な態度・無視・嫌がらせ等によって・精神的苦痛を与える
  • 老化現象などを嘲笑したり 人前で話して恥をかかせる(排泄の失敗・食べこぼしなど)
  • 怒鳴る・ののしる・悪口を言う
  • 侮蔑を込めて 子どものように扱う
  • 楽だからという目的で トイレに行けるのにオムツをしたり 食事を全介助する
    (本人の尊厳を無視する行為にあたる)
  • 台所や洗濯機を使わせないなど 生活に必要な道具の使用を制限する
  • 家族・親族・友人等との団らんから排除する など

ⅳ 性的虐待

  • 性的な行為の強要又は性的羞恥心を催すあらゆる形態の行為
  • 排泄の失敗に対して懲罰的に下半身を裸にして放置する
  • 楽だからという理由で 下半身を裸にしたり 下着のままで放置する
  • 人前で排泄行為をさせる おむつ交換をする
  • 性器を写真に撮る スケッチをする
  • キス 性器への接触
  • セックスを強要する
  • わいせつな映像や写真を見せる
  • 自慰行為を見せる など

ⅴ 経済的虐待

  • 本人の合意なしに 又は判断能力の減退に乗じ 金銭や財産を消費する
  • 本人が希望する金銭の使用を理由なく制限する
  • 日常生活に必要な金銭を渡さない 使わせない
  • 本人の自宅等を本人に無断で売却する
  • 年金や預貯金を自分の借金返済等のために無断で使用する
  • 入院や受診 介護保険サービスなどに必要な費用を滞納する
  • 世帯の生活が苦しいため 本人に必要な使用より 他の家族の使用を優先する
  • 施設入所しているのに本人の同意なく自宅の改造費に預金を使う など

虐待への対応

虐待を発見したら

冒頭に載せた通り 即 行動を起こしてください


意思表示ができない方の場合

上記に載せた具体的な虐待例を基準に考えます また「人権」を考えましょう
自分がされていやだなぁ~と思うことは だいたい虐待です


虐待の早期発見

虐待の加害者の多くは無自覚・もしくは仕方なく行っていることが多いと思われます そういう方がエスカレートしないためにも 私たちは 正しい知識を持って 助言することが大事です
無自覚な方には 虐待の可能性があることを示唆したり 仕方なく行っている方には 他の方法があることを伝えたりします


虐待から生活が安定するまでの継続的な支援

虐待を通報 助言したからと言って それで済むわけではありません 市町村の措置があった場合はいいですが 具体的なアクションが無い場合はほとんどです
虐待の多くは やりたくてするわけではありません ストレスが溜まっていたり 正しい知識がない状況が積み重なって 起こるものです ですから 再発防止を考え 継続的な支援につなげるためには 私たちが正しい知識を持ち 正しい方法や制度・社会資源等につなげていくことが一番と考えます 皆さんはどう考えますか?

参考