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キャラクター:Illustration by 青トキエ

はじめに

みなさま お仕事 お疲れ様です.青葉です
朱花です
今回は 通称:カスハラについて お話します.
えっと カスハラってなんだろう・・・

「カスハラ」とは?

カスハラとは カスタマーハラスメントの略です.

お客さまから 介護職員などに対して 不当な要求や暴言 セクハラ 威圧的な態度を取る行為を行い その結果 介護職員などが働きづらくなることです.介護現場では 介護する側もされる側も 何らかのストレスが溜まることがあります.ストレスが原因で カスハラが発生しやすい環境にあります.

何もすべての人が カスハラをおこなっているわけではありません.全体からすると ほんの一部です.しかし 昔からなくならないことも また事実です.


そっかぁ.分かりやすくいうと 例えばどんなことなの?

例えば セクハラ.お客さまが ヘルパーの胸をつかんだり 性的な言葉をかけたり.
威圧的な態度で 暴力をふるったり 怒鳴りつけたり.見下すようなことを言ったり.
よくありがちなのが 「まだ旦那さんいないの?」「あなた 子供はまだなの?」など.
人生の先輩だからって 何を言ってもいいわけじゃないよね
また「あなた太っているから 痩せないと」といったり.ひどいのになると 「豚がかばんを抱えて入ってきたぞ」といったり.

これは常軌を逸した極端な例ですけどね.でも 実際に起きたことです.これはもう「認知症だから」だけで片付けられる問題ではないですよね
よくありがちなのは

  • 提供することができない契約外のサービスを強要し 別の人に口止めをする
  • 姑の嫁いびりのように ヘルパーに家事の教育をしようとする

こんなことされたら もう 行きたくないですよね.ですから 対策をとらなければなりません.

ここでは 介護現場 特に お客さまのご自宅で行う訪問介護における お客さまから従業員に対するハラスメントについて 解説します.また 事業所の方針についても触れますので ぜひ参考にしてくださいね.

なぜ 訪問介護のカスハラが問題なのか

訪問介護の現場を知らないかたは 施設介護と一緒に考えがちですが 在宅と施設とでは お客さまのタイプと環境がまるで違います.別の種類の仕事といっても過言ではないほどです.主な理由は次の通りです.

在宅介護は お客さまの家にいく

あたりまえですが お客さまのふるまいは大きく異なります.介護施設と違って 自宅は長年住み続けたホームグラウンドです.ヘルパーは異物だと感じます.だから 訪問介護に抵抗があるかたも多いのです.お客さまは 異物であるヘルパーを 自分好みに教育したくなり つい 高圧的な態度をとってしまうのです

まるで 姑が息子の嫁を 教育するかのよう・・・

記録に残しづらい

ホームヘルパーは 通常一人で向かいます.本当は間違っているのですが お客さまは 時間内にできるだけ多くの事を手伝ってもらいたい そう考えるお客さまが多いです.そうなると ヘルパーは大忙しです.作業に加え 通常の介護記録もつけなければなりません.そんな中で ハラスメントに遭っても 記録を残す余裕がないのが現状です.

口止めされる

通常の業務外の事をヘルパーにおこなってもらい 口止めするお客さまもいらっしゃいます.

相談しづらい

ヘルパーの心理としては 別のヘルパーが訪問できているのだから 自分が精神的ダメージをうけても 自分がちゃんとしないからだ そう思い込んでいるヘルパーも多いんです.

提言が届きづらい

国会議員や国の審議会に提言をすることができる 業界団体の偉い人は たいてい 施設をかかえる大きな組織ばかりです.それが例え訪問介護の協会だとしても 施設出身の人が多い印象ですね.ですから 訪問介護だけを運営している うちみたいな小さな会社の提言は 届きづらいのだと思います

実際 審議会の議事録や メディアに出演する介護業界の人をみるかぎり 施設介護が前提のポジショントークばかりな感じがしますからね

っていうか ヘルパーもサービス提供責任者も そんな暇じゃないよね

以上の理由から 訪問介護のリアルな情報が 世の中に届きづらいのだと思います

国の対策

詳しくは以下のリンクをご覧ください

厚生労働省 介護現場におけるハラスメント対策
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05120.html

国は 適切なハラスメント対策を強化する観点から すべての介護事業者に対して ハラスメント対策を求めています.これには 「男女雇用機会均等法などにおける ハラスメント対策に関する事業者の責務踏まえるようにと 付け加えられています.
私の視点でざっくりいえば 国の対策は次の二点に重点がおかれていると思います.

  1. 事業所側が対策をとること
  2. 男女平等に仕事ができるようにすること

これをみるかぎりでは どちらかというと 事業所に対策をもとめ お客様側の責務に関しては あまり言及してないように感じます.

勘違いして欲しくないのですが 国のせいにしたり 制度の不備を指摘したり 社会の風潮のせいにするのは よくありがちではありますが 私には解決法とは思えません.私たちは 今 現場で一生懸命に働いている ヘルパーの皆さんを守りたい.そうすることが 本当の意味での 地域福祉に貢献することだと思うからです.

明日からできる 具体的な対策法を 一緒に考えていきましょ!

具体的な対策

それでは 具体的な方法を考えていきましょう

職場環境の整備

ルールと考え方を明確にする

契約書や規定に 明確に カスハラについて明記し お客さまに伝えましょう.
ちなみに うちの事業所の契約書には 次のような条項があります

事業者から行う解約措置
(中略)
・お客さまが事業者や訪問介護員等に対して ハラスメント その他不信行為を行った場合は即座にこの契約を解約することができます.

※ちなみに「お客さまの定義」は「介護保険の利用者 および その家族等」と明記しています.

このように 条文を明確化することによって 法的にも効力を持ちます.

記録の徹底

えー へるぱーさんは そんな余裕ないよー

たしかにその通りです.

法律家のみなさんは

「自分たちの身を護るために 記録を残しましょう!」

な~んていいますが 現場では

「そんなヒマ あるわけないじゃん」

と思っています.ですから うちの場合は 仕事用のグループウエアで 情報を随時共有しています.

ラインのグループチャットみたいな感じなので わりとみんな 雑談したりしています.そんな 気軽に情報共有できる仕組みが 大切だと思います.

職員の教育と支援

研修の実施

え何かにつけ すぐに「研修」「研修」って 介護職員はいったいどれだけ研修受ければいいのよ!
ごもっともです.まったく同意します.

ただ なにがカスハラに該当するのか 精神的にダメージを受けたらどうするのか これは 知識がなければ 泣き寝入りするしかありません.ですから 知識を付けて 自らの身を守ることも重要です.

メンタルサポート

以前は うちも メンター制度を採用していたのですが 長くは続きませんでした.したがって 早期発見と 素早い対応を心がけています.メンタルのケアについては 仕事の上司が相談にのるといっても なかなか本音で語るのは難しいと思います.ですから ヘルパー同士で相談ができるように グループチャットを活用しています.

法的対応

法的知識の習得

介護職員に 法律の知識を求めるのは酷というもの.ですから 管理者や会社代表が 最新の動向に気を配る役割分担が必要です.その時に とても便利なのが Google先生やチャットGPTです.使ったことの無い人は ぜひ有効活用しましょうね.

法的手段の検討

介護ハラスメントの解説の多くは お客さまを守ることが前提で説明されています.それも 契約解除ができるかどうかが論点になっているようです.
しかし リアルの現場は違います.カスハラの現場では 一部でそれが日常的に行われていることは周知の事実です.
ですから 管理者や法人代表は 場合によっては 刑事上の責任を訴える覚悟があってもよいと思います.
昔とちがって 介護を受けるお客さまは わりとしっかりしているからね.刑事責任をとれる人もたくさんいると思う
なお カスハラは次のような罪の可能性があります.

「名誉棄損罪」「侮辱罪」「強要罪」「脅迫罪」「威力業務妨害罪」

早期の問題解決

コミュニケーションの改善

お客さまと 従業員と 会社.この三者に十分な信頼関係があれば そもそもカスハラは起きません.日頃からのコミュニケーションを改善し 誤解や不満を未然に防ぐことが重要です.
マジでね

迅速な対応

小さな問題でも 即座に対応する.ここは サービス提供責任者の出番かもしれませんね.できないことはできないと ハッキリ伝えることが重要です.
日頃の信頼関係があれば 大丈夫なはずだよね.

同僚との連携

チームでの対応と情報共有

訪問介護は 一人で行動するため どうしてもチーム同士の情報共有が乏しくなります.一人で抱えこむことの無いように お互いにお互いの健康を確認し合いましょう
グループチャットが とっても役に立つよね

マインドセットは「感情で判断しない」

色々と対策を説明してきましたが これがいちばん大事かもしれませんね.
どういうことかな
そう思いますよね.ですから 別に章立てて ご説明します

善悪の判断をしない

ハラスメントで一番ダメージがあるのは どう考えてもヘルパーの心ですよね
これは いろんな意味で 社会に多大な影響を与えます.また 一度精神的にダメージを受けたヘルパーは 二度と介護の現場に戻ってきません.
せっかく 向いているのに もったいないよね

ですから ヘルパーの心を守ることが最重要です.
ヘルパーさんの心を守れば 巡り巡って社会のためになるのね
そのために重要なマインドセットはこれです

善悪の判断をしない

多くの人は 感情で動いています.特に 無意識での善悪の判断はやっかいです
どういうこと?
人間は まず扁桃体で好き嫌いの判断をします.扁桃体とは脳の部位で 感情の処理と反応に重要な役割を果たします.瞬時にポジティブな感情やネガティブな感情をおこないます
その後 その情報が前頭前皮質などに伝達され 前頭前皮質は複雑な意思決定や社会的判断に関与します.これにより 扁桃体からの情報をもとにより精緻な判断 例えば善悪の判断を下すのです.

みなさんも 暴言を吐くお客さまのことは 悪い人だと思いますよね?逆に 励ましてくれるお客さまのことは いい人だと思う事でしょう.
このように 感情で判断することが 実は危険なのです.世の中に 完全な悪人と 完全な善人はいません.どんな人だって いろんな性格や 特徴を持っています.

たしかに お客さんはいつも暴言を吐くわけじゃないよね.意外な面や かわいらしい面はあるよね

そうです.ただ 私たちはお客さんの家族ではない.仕事で関わっているだけ.だから あまり思い入れを持たない方が無難ですね.それがゆくゆくは 差別につながりますから.
ですから もし 暴言を吐くお客さまがいたら 客観的にみましょう.
どういうこと?
そうですね.例えば 犬がワンワン吠えていたら どう思いますか?

んーー あたりまえだけど 犬がワンワン吠えているなぁーと 思う.

そういうことです.
犬が吠えている時は 特に善悪の判断はしませんよね.
例えが適切ではないかもしれませんが 同じように お客さまが暴言を吐いている時も 
お客さまが こう話したと 客観的に観察するんです
まるで別の視点から 自分に今 起こっていることを 観察するんです.そうすると 自分は当事者ではないような気になれるんです.

カスハラに遭遇したとき 自分も同じ目線にたって 悲しんだり怒ったりするのではなく 冷静になって その起こっている事実だけを見るんです.
「お客さまは自分が嫌いなんだ」と感じるのは感情で 「何時何分 こういう作業をしている時に 強い口調でこうはなした」というのが 客観的にとらえるということね.
その通りです.これだったら いちいち 別に用意したハラスメント用の書式に記録しなくて済みますよね.いつもの介護記録に残すだけ
ただ いきなりこんなことをするのは難しいので 感情で反応しない 冷静に判断する方法としては 次のような対策があります.

  • 介護保険でできる範囲を理解する
    何がよくて 何をしちゃいけないか 知らないと 判断できない
    こちらのページを参照してね(介護保険の訪問介護(ホームヘルパー)でできること、できないこと)
  • 訪問の目的を明確にする
    目的を明確にすれば きちんと断れる
  • できることは お客さんにおこなってもらう
    家事をたくさんしてもらいたい方が多いけど それって間違ってる.甘えて楽ばかりすると そのうち何もできなくなる.そもそも「自立した生活が目的」
  • 多くのお客さまには ハラスメントの自覚がないことを知る
    自分が悪人だと思っている人はいない

お客様のホームグラウンドへ一人で行くヘルパーは 施設と違って不安がいっぱいです.ただでさえ心理的不安が大きい仕事なんですから「勇気を持て」と鼓舞するのは 負担が大きすぎますよね.
だから 知識を増やして 客観的に対応する練習をするのです.

まとめ

お疲れさまでした!

カスタマーハラスメントは 最大のストレス要因だと思います.リアルな現場の現状を 偉い人たちは あまり分かっていないかも知れません.
だけど 今困っているヘルパーさんは 法律が変わるのを待っている余裕はない
ですから 自分たちの身は 自分たちで守るしかないのです.事業所が適切な対策を講じることで ヘルパーのメンタルヘルスを守り お客さまとの良好な関係を築くことができます.私たち現場の 決して偉い人たちには届かない小さな小さな努力で 地域社会は保たれているのです.
一時の感情ではなく 大きな視点を持つことが大事
私たちは 電気やガス 水道のように 地域にとって なくてはならないインフラです.その自覚を持ち 長く続けることが使命なのです.

絶対に やせ我慢しては ダメだよ!

ストレスフリーで 楽しくお仕事しましょうね!
それでは 今日はこの辺で失礼します.

最後まで みてくださって ありがとうございました.
また お会いしましょう.
またね~