断りづらいお客さまへの対応
お客さまから 訪問介護ではできないことを 要求されることはありませんか? 事務所からは「お断りしましょう」と言われているけど 雰囲気的に 断りづらいことってありますよね? そういう時どうするのか 一緒に考えてみましょう
結論 お断りするしかない
結局「魔法の一言」みたいなものはありません どんな裏ワザ的なものを駆使しても 相手にきちんと伝わらなければ意味がありません ケアプランに基づかない内容は どうやってもお断りするしかないのです
お断りするのは ほんの3分程度の勇気です そのちょっとした「断る勇気」がないために ずっと悶々とした気持ちで過ごすのはコスパが悪いとは思いませんか?
お断りテクニック
お客さまにお断りをする 具体的な方法と例は 次の通りです
- 1.まずは きっぱりと断る
例:「それはできないです」 - 2.共感する
例:「お気持ちは とても分かるんですが」
例:「皆さん よくそうおっしゃるんですが」 - 3.話を終わらせる
例:それより「〇〇はいかがしますか?」
例:結局「例の〇〇の件はどうなったんですか?」
※理屈が通用しない相手には ここで話題を変えて 話を終わらせます - 4.理由を伝える
例:「ケアプランに書かれていないことは できないんです」
例:「できることはご自身で行わないと 身体がなまってしまいますよ」 - 5.平等性
例:「これは みんな できないんですよ」
例:「お客さまだけ 行うわけには いかないのです」 - 6.代替案を提示する
例:「来月からケアプランに盛り込むようにお伝えしましょうか」
例:「業者さんを紹介するように 事務所に連絡しましょうか」
※ケアプラン全体の兼ね合いがあるので ケアマネに無断で話を進めない - 7.メリットを伝える
例:「これが ご自身でできるようになったら いいですよね」
例:「息子さんが 喜びますよ」 - 8.前向きな気持ちで会話を終える
例:「ご理解いただき ありがとうございます」
例:「コケないように私が後ろについていますから 一緒に頑張っていきましょうね」
断るコツ
- まずは あなた自身が 心の底から理解しましょう:自立支援にならないことを ちゃんと 心の底から腹落ちしてください
- シンプルにきっぱり断る 前置きが長くなると 相手に期待を持たせてしまいます
- 軽い口調で断る 断りづらくて 言いづらそうに断ると 相手はその感情につけ込んでくる
- 「本当はしてあげたいけど」はNG 絶対に言わないでください 無断でさせようとしてくる
- 最初に謝らない 「ごめんなさい」は あなたに非があると 相手に勘違いさせてしまう もし言うなら それで落ち着く相手にだけ使う
こんな時どうする?
多くの人は 感情で生きています ですから お断りした時の反応は おおよその予想がつきます
- 怒り
- 悲しみ
- 嫌悪
- 驚き
- 軽蔑
- もがる(異議を申し立てる)
これらについて ケース別にみてみましょう
怒る場合
「どうしてできないんだ!」
こういう時は 事務所に責任転嫁してOKです
「食い違いがあったみたいですね 事務所の方に ちゃんとご説明するお伝えしますね」といって すぐに話題を変えましょう
なお 最後に軽く「ごめんなさいね」は効果的な場合があるが 最初に謝るのは あまりよくないです なぜなら「あなたが悪い」になってしまうからです
「できんなら もう今日はなんもすることないから帰っていいよ」と言われた場合は キャンセル扱いになるので その旨を伝えて 退出してOK それ以外にすることがないってことは そもそも ケアプランが 間違っていたからです
悲しむ場合
「そうなのね できないのね これから 私 どうしようかしら・・・」
そういう場合は まず共感しましょう 「できないとは 思わなかったですよね お気持ちはわかります」といって すぐに話題を変えましょう 「それでは 今日は〇〇をしましょうか」
嫌悪感を示す場合
「なんけ こんなこともできないとけ」
できない旨を伝えたら すぐに話題を変える「はい できないんです それで 今日は〇〇はいかがですか?」と話題を変えましょう
驚く場合
「えぇ? こんなこともできないの?」
できない旨を伝え すぐに話題を変える「はい できないんです それで 今日は〇〇はいかがですか?」と話題を変えましょう
軽蔑する場合
「なんけ あんたは これもよーせんとけ!」
できない旨を伝え すぐに話題を変える「はい できないんです それで 今日は〇〇はいかがですか?」と話題を変えましょう
もがった時(異議を申し立てる)
「もがる」とは 不平をいって異議を申し立てるという意味の方言(だそう)です
例えば こういうタイプです
不平等を訴える
「〇〇さんは やってもらったげなよ」
「〇〇ヘルパーは やってくれたっちゃけどね」
何とかして やってもらおうとする
「でも これやってもらわんと 困るっちゃけど」
不正を働きかける
「そんなの 事務所に黙っておけば 分からんっちゃが」
これらのタイプは 普通にお断りすればOK 不正を承知で要求してくるので ヘルパーが応じない態度を示せば あんがい簡単に諦めてくれます
番外編:ケアマネが不正を要求する時
「ケアマネさんが やって良いって言ったよ?」
その場は「できません」とお断りして その後 ケアマネさんに確認します 本当にそのケアマネさんが不正を要求してきたと分かったら もうそのケアマネさんとは取引停止してOKです
番外編:断れなかった場合・・・
あなたが お客様に断る勇気がなく 承諾してしまった場合のお話です
そういう時は ちゃんと事務所に事後報告しましょう その場を切り抜けることができて あなたは満足かも知れませんが 次のヘルパーさんや 責任者は大変です だって
「前のヘルパーはやってくれたのに どうしてあなたはやってくれないの?」
こうなるに決まっているからです。
事後報告する勇気がない人は メールでもLINEでもよいので伝えましょう 事務所は その後のフォローを行わなければなりません
どうしても言い出せない 隠し通したいあなた
きっと そういうことを伝えにくい職場環境なのですね そういう場合は さっさと職場を変えましょう あなたにとっても 職場にとっても よくありませんので
ちょっと深掘り解説
これまでは その場でどうすればよいか 具体的なHow to をお伝えしましたが ここからは もう少し掘り下げて考えてみます
- 小難しいこと考えたくない!
- 具体的なHow to だけ知りたい
そんな方は 以下は 見なくても大丈夫です!
食い違いはどこから生まれるのか?
おおむね 次の通りだと思います
- 最初から 訪問介護を「家事代行サービス」だと思っている
- ケアプランや計画書を 単なる「形式」と思って軽く考えている
- 「計画書に書かれていることだけしかできない」ことを知らない
相手が お客さま・ケアマネ・事業者・ヘルパー どんな人であろうと 勘違いしている方の誤解を解くのは ほぼ不可能です ですから”ダマしダマし” その場を取り繕いながら続けるしかありません
なぜなら 多くの人は 小学生並みの読解力しかないからです(「赤本」「青本」を読んでみよう「読めないのはあなただけじゃない」を参照)
それは例えば 未だに多くの大人がコロナを恐れているようなものです 読解力がないことの本質とは「具体的に目に見えない物事を 頭の中で想像できない」ということ
つまり 自分の直感と違う物事は 具体的に目に見えなければ 理解できないのです 自分の直感と反することを 言葉の説明だけで理解できる人は かなり稀だと思います
ですから「ケアプランに書かれていることだけしかできない」 これだけで おそらく問題の多くは 解決できると思います
きちんと理念を持ちましょう
理念=物事に対して理想とする概念 根本的な考え
会社には「理念」があります ちゃんとした大人にも「理念」があります 理念とは その人の行動原理のようなもの これがない人は「その場しのぎ」で生活し なかなか困難に立ち向かうことができません ですから「理念」はとても大切です
介護保険制度全体を貫く理念とは 次の3つ
- 尊厳を保持し 能力に応じ自立した生活
- 自ら悪化を予防し 要介護状態になっても 能力の維持向上に努める
- 共同連帯 費用を公平に負担する
これを 理解できない人や 「単なる形式でしょ?」と 実存的に考えることができない人は 現場で理不尽な目に遭っても その場で考えることはできないと思います
逆に 介護保険の理念を理解できていれば 仮に「グレーゾーン」に遭遇しても その場で考えて行動できると思いますし 行政にツッコまれることもないでしょう
安易に「グレーゾーン」と言わない
法律をみても「白黒はっきりしない状態」のことを 俗に「グレーゾーン」と言います しかし不用意にこの言葉を使う人は おそらく介護保険の理念をちゃんと理解できていない人だと思います なぜなら 介護保険の最終的な運用の判断は ケアマネに委ねられているからです したがって 例えば AさんはOKだけど 同じサービスだけどBさんにはダメ ということがあり得るのです
介護保険の理念をちゃんと理解したうえで きちんとアセスメントをして ケアマネさんやお客さまと話し合いましょうね
「黙っておけばいい」というお客さまは 100%バラす
違反を承知で ヘルパーに不要なサービスを無理強いしてくるお客さまで
「事務所に黙っておけば大丈夫だよ」
って言うかた たまにいらっしゃいますよね 断言しますが こういうお客さまは 間違いなく100%事務所や他の人に漏らします
よく考えていただきたいのですが
お客さまは違反を承知であなたにさせている 要するに「ズル」をする人です そんな人が 自分が不利な状況でも あなたの立場を守るために 立ち回ると思いますか?
そんなわけありませんよね
それが解ったら ちゃんとお断りするクセをつけましょう 断る勇気は3分で終わりますが 黙ってた背徳感は ずっと続きますよ
仏壇の水替えを依頼する人は 信心深くない
よぼよぼのお年寄りが 仏壇の掃除や水替えを依頼してきたら なんだか信心深そうで やってあげたくなりますよね でも やらなくてOK なぜなら
本当に信心深い人は 自分でやるから
信仰に係ることを代行してもらう人に 本当の信仰心はありません 本当に信仰心がある人なら 身体を支えてもらうなどを提案するはずです というのも 信仰にはそれなりの「作法」があって ヘルパーがその「作法」を知らないことは 仏さまへの不敬にあたりますし そのことをお客さまは容易に想像がつくはずだからです
だけど こういうことは 介護の教科書に載っていませんよね でも 思想や哲学など 幅広い知識を持っている人なら きっと思いつくはずです 介護保険の法律は 広そうで 実はたいしたはありません 小説一冊よりもすくない それくらいの分量なら 頑張れば誰でも読めますよね?
狭い介護保険の範囲をぐるぐると勉強して「介護オタク」になっていませんか? お客さまは 一般の人です ですから 幅広い一般知識を身につけましょうね
実は「窓ふき」はNGじゃない⁉
介護保険のヘルパーがやっちゃいけないことNo1が「窓ふき」だと思います でも これは 勘違いの可能性が高いのです
厚労省の告示には 「日常的に行われる家事の範囲を超える行為」の例の中に「大掃除・窓のガラス磨き・床のワックスがけ」と書いてあります
お気づきですか? 窓ふきではなく「窓のガラス磨き」と書いているのです・・・ 伝言ゲームって怖いですね
皆さんは 自宅の日常の掃除で 窓ふきしますよね? 例えば台風後の 葉っぱのついた窓や窓枠のレール 掃除したいですよね? お客さまも同じ気持ちだと思いますよ
ただし ほとんどのケアマネさんや事業所は「窓ふきダメ」と思っていますので 話してもムダそうだったら 諦めましょう 一番ダメなのは 事務所に黙って勝手にやることです
正確には「算定できない」
窓のガラス磨き 仏壇の水替え 嗜好品の買い物 などなど 日常生活の援助以外のことは 「やってはならない」と思っていませんか? 確かに 結局はそういう理解で差し支えないのですが 厳密には「算定できない」というのが本当のところです
算定できないとはどういうことか? それは「それを行っても介護報酬をあげませんよ」ということです つまり NGな行為がダメではなくて NGな行為をおこなって介護保険の請求をしたらダメってことなのです
もっと言えば ケアプランや計画書に基づいたサービスをおこなった後に 引き続き NGなサービスをおこなっても それは大丈夫です
問題は 有償サービスの時間です 例えば 買い物代行ついでに タバコ買ってくるとか 掃除ついでに さっとタバコ1個買ってくるのに 大した手間や時間はかかりませんよね? 主目的は介護保険の内容だが 付け加えた”ついでに”を 厳密に案分して請求することには 何の問題もないはずですが
それを「無料サービス」にすると 途端にややこしくなります
最初は「ついで」のつもりでやっていても 「伝言ゲーム」的に 「この事業所はNGなサービスをおこなってもOK」と勘違いされかねませんからね したがって 事業所で指針をを決めた方がよいと思います
あまりよくない返し方
「事務所に相談してみます」
「上の者に相談します」系の返しは よく聞きますが 例えば営業マンがこれを言ったら その営業マンは間違いなく”仕事ができない営業マン”です
なぜか?
お客さまが待つ間 期待を持たせてしまうからです お客さまは 基本的に 自分にとって都合のいい想像しかしません お客さまが待っている間は お客さまはきっとこう考えていることでしょう
やってくれるように 上司に掛け合ってくれる
この状況で 断ってしまっては お客さまの落胆は より倍増するでしょう
あなたが断りづらいからと言って 時間稼ぎをするのは止めましょう できないことはできないと 早い段階で ハッキリお伝えするのが お客さまのためなのです
「うちの有償がありますよ」
「うちの有償に聞いてみますね!」得意気にこう伝えれば いかにもあなたの手柄になりそうですが これもあまりよくありません 有償サービスを兼ねている事業所はたくさんありますが ヘルパーは介護のプロであって 家事代行のプロではないのですから
お客さまにとって 生活上 本当に必要な家事であれば サービス提供責任者からケアマネージャーに相談してもらって 計画に盛り込んでもらいましょう
介護保険でできないサービスであれば 家事代行のプロにお任せしましょう
まとめ
お疲れさまでした
今回は「断りづらいお客さまへの対応」を中心にお伝えしました
コツは「ダメなことは 早い段階で しっかりお断りをする」でした 早い段階でお断りしたほうが お客さまにも ヘルパーにも よいことを説明しました
後半は ちょと深掘りしましたが こういう臨機応変な対応は 法律を理解できて お客さまとの対応がしっかりできる人でなければ おススメできません 「断る勇気がないあなたへの免罪符」ではありませんので ご注意ください
それでは くれぐれも視野の狭い「介護オタク」にならないように 幅広い知識をつけて 楽しんでお仕事しましょうね