動画版はこちらをご覧ください

はじめに

「青本」とは?

「社会保険研究所」というところから出版されている「介護報酬の解釈」という本です 介護保険の条文・告示等に係る本は3シリーズあり

  1. 単位数表編:通称「青本」
  2. 指定基準編:通称「赤本」
  3. QA・法令編:通称「緑本」

とがあります

本のリンク先はこちら
法令のリンク先はこちら

青本には サービス内容と単位数の計算方法が掲載されています

このページの留意点

  • 管理者・サービス提供責任者を想定した内容です
  • 訪問介護が対象です
  • 大まかな計算法を理解するための 最低限のマニュアルです
  • 細かな加算内容は解説していません
  • 国保連請求や実地指導対策ではないことを ご留意ください

それでは さっそく見ていきましょう

青本を理解するために

青本の構成

青本の構成

  • 告示(指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準)平成十二年厚生省告示第十九号
  • 告示の解説・解釈方法

次の順に理解するとよい

  1. 基本サービス
  2. 加算・減算
  3. 処遇改善加算

まずは自分に関係することだけを

例えば 処遇改善加算は14種類あります これをいちいち全部覚えるのは 骨が折れます
ですから ひとまず 自分の事業所に関連するところだけ理解しましょう 例えばこういうことです

  • 通院等乗降介助の有無
  • 特定事業所加算の有無・種類
  • 処遇改善加算の有無
    など

これだけは理解しよう

標準的な時間で算定

私が最もお伝えしたいことです 告示の注1の一番はじめに こうあります

注1 指定訪問介護事業所の訪問介護員等が、利用者に対して、指定訪問介護を行った場合に、現に要した時間ではなく、訪問介護計画に位置付けられた内容の指定訪問介護を行うのに要する標準的な時間で所定単位数を算定する。

その後も だらだらと説明が続きますが 要点はこういうことです

  • ケアプラン・訪問介護計画書にないサービスはダメ
  • 実際の時間ではなく 計画書の時間で算定
  • あまりに早く終わることが長く続いたら(1か月以上) プランを変更する
  • 長時間サービスを 短く区切るのはダメ
  • 次の訪問までだいたい2時間未満の空きしかない場合は 1サービスに合成する
  • 短時間のサービスが連続する場合も 1サービスに合成する
  • 安否確認だけや健康チェックだけのサービスは 若干の身体介護や生活援助を行ったとしても 算定できない
  • 1サービス中にヘルパーが交代した場合も 1サービスで算定する 

「標準的な時間で算定」を理解できてる人を ほとんど見たことありませんので 詳しく解説しますね

延長料金はない

要は「延長しても延長料金はとれない」ということです また「逆に短時間で終わってもOK」です

こんな時は!?

例:オムツ交換30分 身体1の計画でヘルパー訪問したが 便汚染でシーツまで汚れていて いつもより処理に時間がかかり 所要時間:60分を要してしまった
→ 身体1(30分未満)で算定
逆に 20分で終わった場合 それで退出してもOK

例:病院の付き添い2時間 身体4の計画でヘルパー付き添いしたが 病院が混んでいて いつもより時間がかかり 所要時間3時間を要してしまった
→ 身体4(2時間未満)で算定
逆に 1時間で終わった場合 それで退出してもOK

こういうことです お分かりになりましたか?

あまりに時間が違いすぎたら?

例:入浴介助60分 身体2の計画でヘルパー訪問したが 毎回30分程度で終わる
→ 計画通り身体2(60分)で算定してOK ただし その状態が1カ月以上続く場合は ケアマネに伝えて担当者会議をして計画変更してもらう

青本には書かれていませんが 逆のパターンも 同じです ケアマネに伝えて計画変更するまでは 計画通りの単位数しか算定できません

計画が事実と大きく違う場合は「ただ働き」になりかねません サービス提供責任者は正確な所要時間の推測を行いましょう

サービスの合成 通称「2時間ルール」

例えば こういうことです

身体1(8:30~9:00) + 身体1(10:00~10:30) = 身体2(8:30~9:30)

サービスとサービスとの間が だいたい2時間も空かない場合は 2回ではなく1回のサービスとしてカウントします その際1サービスにまとめられます
例えば 身体1+生活2=身体1生活1
例えば 通院等乗降介助 + 身体1 = 身体1 もしくは 身体2
※通院等乗降介助と身体介護とを連続して行う場合 通院等乗降介助は算定できません

こんな感じに・・・

合成したら ぶっちゃけ もらうお金は減ります
また 別のヘルパーが行った場合 それぞれのヘルパーの給料計算もやりづらいです
なので 事業所としては メリットは全くありません しっかり覚えておきましょう

「留守番」や「様子見」だけはダメ

「安否確認」「健康チェック」だけでは算定できません

例えばこういうことです

  • 徘徊があるお客さまが家にいるか確認する
  • 体調の悪いお客さまの様子見に行く
  • ちゃんと寝ているか様子見に行く
  • 一人で留守番できているか様子見に行く など

これらは いづれも算定できません 仮に様子見や健康チェックついでに ちょっとした掃除をしたり 整容などをこじつけても 算定できません

こんな時は!?

 定期的な体位交換が必要 → 身体0を算定します ただし定期巡回型の指定を受けている事業所しか算定できません

「標準的な時間で算定」「サービスの合成」この2つの概念を理解している人を 私はほとんど見たことがありません 一般的な”時給”の考え方と 少し違いますので しっかり覚えておきましょう

基本となるサービス

訪問介護のサービスは 次の3つしかありません

  • 身体介護
  • 生活援助
  • 通院等乗降介助

ただし ここでは便宜上 身体+生活 の合成もご説明します

身体介護

詳細な説明と禁止行為はこちら 身体介護の具体的なサービス内容はこちらをご覧ください

  • 主に身体のお世話をする場合(生活援助・通院等乗降介助以外のすべての訪問介護)
  • 20分未満(身体0から始まるサービス)は 定期巡回型の指定をとっている事業所でなければ算定できない
  • 20分から30分:244単位 通称「身体1」
  • 30分から60分:387単位 通称「身体2」
  • 60分から90分:567単位 通称「身体3」
  • 以降、30分ごとにプラス82単位 「身体4」「身体5」など
こんな時は!?

例:オムツ交換(身体介護)の後 15分程度 片付けや掃除を行った場合
答:身体介護の一連のサービスとして評価されますので 別に生活援助を算定できません

※ヘルパーさんの記録にも 身体介護の後の掃除や片付けは 生活援助欄の「片付け」「掃除」に記録しません

生活援助

詳細な説明と禁止行為はこちら 生活援助の具体的なサービス内容はこちらをご覧ください

  • 家族が同じ家にいる場合は 算定できません
  • 家族が病気や障害で家事できな場合は算定できます(ケアプランの1票目に記載が必要)
  • 20分未満のサービスは算定できません
  • 20分から45分:179単位 通称「生活2」
  • 45分以上:220単位 通称「生活3」
こんな時は!?

例:2時間の家事援助の場合は?
答:45分以上の家事援助は いくら時間が長くても「生活3」以上は算定できません
 ぶっちゃけ「家事援助は 長ければ長くなるほどただ働きになる」ということです

お客さまもケアマネも 訪問介護を 時間制の家政婦のように勘違いしている方が とても多いですね 気をつけましょう

通院等乗降介助

詳細な説明と禁止行為はこちら 通院等乗降介助の具体的なサービスはこちらをご覧ください

  • ヘルパー自身が運転する場合のみ(要するに福祉タクシーや介護タクシーのみ)
  • 1回乗車ごとに算定
  • 入退院などの片道でも算定可(条件を確認してください)
  • 病院のはしごでも算定可(条件を確認してください)

身体+生活 複合

  • 身体介護と生活援助との両方を行った場合 合成される
  • 生活援助が20分未満の場合は 生活援助は算定できない
  • 身体介護の単位数に 生活援助 25~45分 +65単位
  •   〃            45~70分 +130単位
  •   〃            70分以上 +195単位
  • これ以上の生活援助は 算定できない

加算・減算の大まかな分類

大まかな分類と簡単な解説です 条件がややこしいものもありますので 詳細は青本をみてね

(割合)割増タイプの加算

基本単位に一定の割合を増やすタイプの加算です

  • 二人(ヘルパー2人):×200%
    • 通院等乗降介助は適応外
  • 夜朝(18~22時 5~8時):×125%
  • 深夜:(22~5時):×150%
  • 特定事業所加算:×3~20%
    • 条件によりⅠ~Ⅴの5段階
  • 特別地域加算:×15%
    • 特定事業所加算Ⅴとの併用不可
  • 中山間地事業所加算:×10%
    • 特定事業所加算Ⅴとの併用不可
  • 中山間地訪問加算:×5%
    • 特定事業所加算Ⅴとの併用不可

(割合)割引タイプの減算

基本単位に一定の割合を減らすタイプの減算です

  • 同一建物減算
    • 条件により 85% 88% 90%
  • 共生型訪問介護
    • 条件により 70% 93%
  • 業務継続計画未策定減算:99%
  • 高齢者虐待防止措置未実施減算:99%

足すタイプの加算

一定の単位数を足すタイプの加算です

  • 初回加算:200単位
    • 新規のお客さまに 初回月に 提供責任者が訪問か同行した場合
  • 緊急時訪問介護加算:100単位
    • 次の条件をすべて満たす場合
      • お客さまからの要請
      • ケアマネが認める
      • ケアプラン外
      • 身体介護
      • 緊急
    • ※ちなみに 救急車を呼んだ場合の救急隊への一連の対応は算定できないので注意!
  • 生活機能向上連携加算
    • 条件により:初回月に100単位 初回月を含め3か月間200単位
    • 提供責任者が リハビリを提供している事業所の 医師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士と連携し訪問をした場合
  • 口腔連携強化加算:月に50単位
    • 歯科・ケアマネと連携した場合
  • 認知症専門ケア加算
    • 条件により:1日に3単位 4単位

※生活機能向上・口腔連携強化・認知症専門ケア加算は うちみたいな田舎の小さな事業所は 非現実的なので見なくてもOK
理由は次の通り
・加算の条件を理解している他事業所を見たことがない
・条件や事務作業が煩雑な割に大した加算ではなく インセンティブが少ない

「初回加算」「緊急時訪問介護加算」をしっかり覚えておきましょう 特に緊急時訪問介護加算を理解しているケアマネは私はまだ見たことがありません ただ働きにならないように 該当する場合は ちゃんとケアマネさんに伝えましょうね

処遇改善加算

最後に処遇改善加算です

これは 一定割合を増やすタイプの加算ですが すべての加算・減算をいったん計算した後に 最後に掛け合わせる加算ですので 項目を別にしました

  • 条件に応じて 4段階 24.5~14.5%
  • 令和6年度までは旧処遇改善加算もありますが 14種類あって煩雑ですので省略しました
  • 条件がややこしいので 詳しくは 青本を見てくださいね

計算方法

ざっくりとした 計算方法の概要は次の通りです

ただ ややこしいですよね?
ピザを注文する時に例えると

  • 基本サービス=ピザ生地の種類
  • 割合の加算・減算=ピザのサイズ
  • 足すタイプの加算=トッピング
  • 処遇改善加算=唐辛子・バジル・オリーブオイルなどの付け合わせ

手順1「基本サービスを確認しよう」

生地の種類 つまり「そもそも何のサービスなの?」ってことです 身体介護・生活援助・身体生活・通院等乗降介助 どのサービスなのか 確認します

手順2「割合の加算や減算」

ピザ生地を決めたら 次にサイズを決めましょう

  • 二人:100%増量!
  • 夜朝:25%増量!
  • 深夜:50%増量!
  • 特定事業所加算:3~20%増量! など
  • 同一建物減算 10~15%カット↓
  • 業務継続計画未策定減算:1%カット↓
  • 高齢者虐待防止措置未実施減算:1%カット↓ など

手順3「足すタイプの加算」

生地とサイズを決めたら 次はトッピングです

  • 初回加算
  • 緊急時訪問介護加算 など

なお ここまでの合計が ケアマネさんに報告する単位数です

手順4 最後に「処遇改善加算」

最後に 付け合わせを決めましょう

処遇改善加算を掛け合わせれば おしまいです!

ここまで理解できれば 先ほどの図の意味がお分かりになるかと思います

実際は システムが計算しますので 皆さんは計算する必要はありませんが 返戻があった時など 計算法を知らなければ 確認のしようがありませんので 大まかな計算法は知っておきましょうね 

なお 手順3までの合計がわかれば 処遇改善加算の単位数は分かります その単位数を毎月ケアマネさんに報告する必要はありませんが システムではなく手計算を行っている奇特な方もいらっしゃいますので 試し算のために 毎月報告しても悪くはありません

まとめ

お疲れさまでした ややこしい説明を 最後までよくみてくれましたね

今回は 青本解説のうち 大まかなサービスと加算・減算 計算方法を見てきました 要点は次の通りです

  • 算定の大前提として「標準的な時間で算定」することと 「サービスの合成」をまずは押さえておきましょう

計算方法は ピザの注文に例えると分かりやすいです

  • まずピザの生地の種類 つまり 基本サービスを知っておきましょう 便宜上 次の4種類に分けてみてきました
    身体介護 生活援助 身体生活 通院等乗降介助
  • 生地が決まったら 次はサイズを決めます
    割合の加算(増量)や減算(カット)
    二人・夜朝・深夜・特定事業所加算など
  • トッピングを決めます
    足すタイプの加算
    初回加算・緊急時訪問介護加算など
  • 最後に付け合わせを決めておしまい!
    処遇改善加算

実際に手計算する必要はありませんが 仕組みを覚えておきましょう

それでは おつかれさまでした!